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ヴァンクリーフ＆アーペル(Van Cleef & Arpels)の歴史

1906年、パリのヴァンドーム広場22番地に小さなジュエリーブランドがオープンしました。
宝石職人のアルフレッド・ヴァンクリーフと、その妻で宝石商の家に生まれたエステル・アーペルの名を冠した「ヴァンクリーフ＆アーペル」です。
エステルの兄たちとアルフレッドが組んで立ち上げたこのブランド、宝石加工の技術ではパリに並ぶものがなかったアルフレッドと、創立メンバーのハイレベルなデザインセンスが融合。
やがて、世界有数のジュエリーブランドとして名をなすことになります。

最初にその名が世界を席巻したのは、1925年に開催されたパリ万国博覧会(現代産業装飾芸術国際博覧会)。バラの花をモチーフにしたジュエリーが大賞を受賞しました。
花びらの1枚1枚がしっとりと輝くような繊細な細工や、心を惹きつけるデザインが評価されました。

その後、ヴァンクリーフ＆アーペルのジュエリーは、特にヨーロッパの王室で歴史的な恋を彩るブランドとして知られるようになります。
たとえば1930年代後半、イギリスを揺るがした国王エドワード8世とウォリス・シンプソンの“王冠をかけた恋”の中で輝いたのも、ヴァンクリーフ＆アーペルのジュエリー。
ウォリスに離婚歴があったために王室から結婚を反対されたエドワード8世は、迷うことなく王冠を捨てて愛に生きることを誓いましたが、そのための演説を行った1936年12月、クリスマスを一緒に過ごせないウォリスにヒイラギの葉をかたどったクリップを贈っています。

また、創立から50年が経過した1956年。モナコ公国の公室の“御用達ブランド”となったことで、その名はさらに高まることになります。
その年はモナコ公室にとって、ハリウッドのトップ女優グレース・ケリーを公妃として迎えた年でもありました。
気品のある美貌、理知的な眼差しで世界を魅了していたグレース・ケリーと優雅でハンサムなモナコ大公レーニエ3世のロマンスは世界を熱狂させましたが、そんな20世紀最大のシンデレラストーリーのクライマックスに登場したのがヴァンクリーフ＆アーペル。
レーニエ3世は、特別オーダーしたパールジュエリーをグレースに贈っています。
楚々とした輝きを胸もとにきらめかせた“リアルシンデレラ”グレース・ケリーの姿は、世界中の女性に甘いため息をつかせたのでした。
現在もヴァンクリーフ＆アーペルはモナコ公室の御用達ブランド。そのジュエリーが、歴代プリンセスの美しさに花を添えています。

そんなヴァンクリーフ＆アーペルは2012年、宝石装飾と時計制作の専門学校「レコール ヴァンクリーフ＆アーペル」をパリで開校。ブランドとして斬新なデザインのジュエリーを生み出しつつ、その知識と技術を伝え、若い才能を育てています。