- 着物
- 2025.05.28
着物の価値の見分け方とは?生地・作家・証紙などから見分ける方法を徹底解説!

着物の価値は、生地の種類や作家、証紙の有無など、さまざまな要素によって大きく左右されます。これらの違いを理解することで、購入時にはもちろん、お手持ちになっている着物の本当の価値を知る手がかりにもなるでしょう。
この記事をお読みいただだくことで、具体的な着物の価値を見分ける方法がわかります。
「どのような着物が高く評価されるのか?」
「自分の持っている着物の価値どうなんだろう?」
といった疑問をお持ちの方は、ぜひ最後までご覧ください。
着物の価値を知ることで、今後の最適な活用方法(売却・保管・譲渡など)を考えるきっかけにもなるはずです。
着物の価値を左右する要素

まず、着物の価値を決定づける代表的な要素にはどのようなものがあるのか、整理してご紹介します。
【着物の価値を左右する8つの代表的要素】
1.生地の種類
2.作家
3.老舗ブランド
4.伝統工芸品
5.証紙
6.生地の重さ
7.染め方
8.装飾
着物に使われる「生地」には、正絹(しょうけん:絹100%)をはじめ、麻・木綿・ウール・ポリエステルなど多様な素材があり、種類によって価値が大きく異なります。
とくに「有名な作家」や「老舗ブランド」が手がけた着物、「伝統工芸品」に指定されている着物は、高い価値が認められる傾向です。
また、品質を証明する「証紙」が付いている着物は、信頼性が高く評価されやすいでしょう。さらに、正絹の着物においては「生地の重さ」も価値の1つの指標となり、一般的には重量があるほど高く評価されます。
「染め方」や「装飾」についても、用いられる技法や施された手間の度合いよって、価値に差が生じます。
次の章からは、これらの要素ごとに、着物の価値がどのように決まるのかを詳しく見ていきましょう
着物の価値の見分け方【生地】

着物の生地として主に使われる素材と、それぞれの特徴や価値について解説します。
・絹(シルク)
・麻(リネン・ラミーなど)
・木綿(コットン)
・ウール
・ポリエステル
それぞれの見た目やお手入れのしやすさ、価値の高さなどについて、順番に解説していきます。
絹(シルク)の着物
絹は蚕の繭から採れる動物繊維で、振袖や留袖といった格調高い着物や、有名産地の高級着物を中心に使用される代表的な素材です。
とくに、絹100%の「正絹」で作られた着物は、価値が高く評価される傾向です。
絹特有の美しい光沢としなやかさは、非常に滑らかな肌触りを生み、着る人の体に優しくなじみます。一方で、湿気に弱く、通気性の悪い場所で保管するとカビが生えやすいという注意点も。
また、水に弱いため、ご家庭での洗濯は基本的にできません。
麻(リネン・ラミーなど)の着物
麻は、苧麻(ちょま)、亜麻(あま)など、植物から採れる繊維の総称です。
麻で作られた着物は、通気性に優れ、シャリ感のあるサラッとした着心地が特徴で、主に夏の普段着として用いられます。
絹とは異なり、ご家庭で手洗いできるものが多く、お手入れのしやすさも魅力の1つです。しかし、シワになりやすく、色落ちしやすいというデメリットもあります。そのため、素材自体の価値としては、一般的に絹ほど高く評価されません。
ただし、例外もあります。
たとえば、新潟県小千谷市周辺で生産される「小千谷縮(おぢやちぢみ)」のように、希少な苧麻を原料とし、国の重要無形文化財にも指定されている麻織物は非常に高く評価されます。
木綿(コットン)の着物
木綿はアオイ科の植物「ワタ」の種子から採れる繊維で、コットンとも呼ばれます。
木綿の着物は肌触りが良く、通気性・吸水性・耐久性に優れているのが魅力です。
ご家庭で手洗いできるものが多く、普段着として気軽に楽しめます。
一方で、洗濯を繰り返すとシワになったり、縮んだりしやすい点には注意が必要です。
お手入れのしやすさから、日常的に着用される着物に多く用いられるため、生地としての価値は、絹や一部の高級麻織物と比較すると高く評価されることは少ないといえます。
ウールの着物
ウールは羊の毛を原料とする動物繊維です。
ウールの着物は、吸湿性と放湿性に優れており、湿気を吸収しても発散させるため、着心地が比較的サラッとしています。また、弾力性が高いためシワになりにくく、もしシワができても元に戻りやすいというメリットがあります。
しかし、虫食いの被害に遭いやすいというデメリットも。
ウールは主に、普段着としてカジュアルに着用される着物に使われるため、生地としての価値はそれほど高くありません。
ポリエステルの着物
ポリエステルは石油を主原料とする化学繊維で、近年ではポリエステル製の着物も多く販売されています。
ポリエステルの着物は、天然繊維の着物よりも安価で手に入りやすく、ご家庭の洗濯機で洗えるなど、扱いやすさが最大の魅力です。
一方で、絹などの天然繊維と比較すると、通気性が悪く熱がこもりやすかったり、生地が硬くゴワゴワした着心地に感じられたりすることがあります。
ポリエステル製の着物は、新品でも比較的低価格なものが多いため、買取市場では高額査定は期待しにくいでしょう。
着物の価値の見分け方【作家】

染めや織り、刺繍などの分野で卓越した技術を持つ有名作家が手がけた着物は、「作家物」として高い価値が認められます。
とくに、人間国宝に認定された作家の作品は、美術品としての価値も加わり、極めて高値で取引される傾向です。
人間国宝の一例として、友禅染の分野で名高い「羽田登喜男(はだときお)」氏が挙げられます。
羽田登喜男氏は、昭和から平成にかけて活躍した日本を代表する染色家です。「友禅」とは、糊で防染しながら多彩な模様を描き出す染色技法で、羽田登喜男氏の作品は「羽田友禅」と称され、京友禅の華やかさと加賀友禅の写実性を融合させた独自の作風で知られています。その功績が認められ、1988年(昭和63年)に重要無形文化財「友禅」の保持者(人間国宝)に認定されました。
有名作家の作品であるかどうかは、「落款(らっかん)」で判断できる場合があります。
落款とは、作家が自身の作品であることを示すために施す署名や印のことで、着物の裾や衿先、おくみなどに小さく記されているものです。すべての着物に落款があるわけではありませんが、有名な作家物には多くの場合見られます。
落款があれば作家名を特定できるため、着物を購入したり価値を判断したりする際には、ぜひ確認してみてください。
着物の価値の見分け方【老舗ブランド】

長年にわたり高品質な着物を提供し続けてきた老舗ブランドの製品も、その信頼性とブランド力から高い価値が認められます。
代表的な老舗ブランドとしては、以下の2つがとくに有名です。
・千總(ちそう)
・ゑり善 (えりぜん)
千總(ちそう)
1555年(弘治元年)創業。450年以上の歴史を誇る京友禅の老舗中の老舗です。
元々は法衣装束商として京都で創業しましたが、明治維新後に友禅染を中心事業に転換。以来、常に最高品質の京友禅を追求し、「京友禅といえば千總」といわれるほどの地位を確立しました。
現在も「CHISO」ブランドとして、伝統を守りながらも現代の感性に合った着物を制作し、国内外で高い評価を得ています。
ゑり善(えりぜん)
1584年(天正12年)に創業。
こちらも400年以上の歴史を持つ京都の老舗呉服店です。
「ゑり善好み」と称される、上品で洗練された華やかさを持つ着物や帯は、多くの着物愛好家を魅了し続けています。
留袖や振袖といったフォーマルな着物から、普段使いのおしゃれ着、和装小物に至るまで、幅広い品揃えも特徴です。
これらの老舗ブランドの着物は、素材選びからデザイン・染色・縫製に至るまで、一貫して高い品質管理がなされており、それが価値の高さにつながっています。
着物の価値の見分け方【伝統的工芸品】

国や地方自治体によって「伝統的工芸品」に指定されている着物も、その歴史的価値や技術の希少性から高く評価されます。
価値が高いとされる代表的な伝統的工芸品の着物には、以下のようなものがあります。
・西陣織(にしじんおり)
・本場大島紬(ほんばおおしまつむぎ)
・京友禅(きょうゆうぜん)
それぞれの特徴について、ポイントを絞って見ていきましょう。
西陣織
西陣織は、京都の西陣地区を中心に生産される先染めの紋織物(もんおりもの:模様を織り出した織物)の総称です。「西陣」という行政区名は存在しませんが、一般的に京都市上京区から北区を中心とした地域を指します。
西陣織の最大の特徴は、多彩な色糸を巧みに使い、金糸や銀糸なども用いて織りなされる、豪華絢爛で立体感のある文様です。
1本の帯に、50色以上の色糸が使われることも珍しくありません。また、「綴織(つづれおり)」や「経錦(たてにしき)」など、数多くの高度な織りの技術が駆使され、他に類を見ない緻密で芸術的な織物を生み出しています。
その高い技術と芸術性が認められ、1976年(昭和51年)に国の伝統的工芸品に指定されました。主に帯地として有名ですが、着物も制作されています。
本場大島紬
本場大島紬は、鹿児島県の奄美大島を発祥とする先染め手織りの平織り絹織物です。
以下の厳しい条件をすべて満たし、さらに20項目にも及ぶ検査に合格した反物だけが「本場大島紬」として認定されます。
・絹100%であること
・先染め手織りであること
・平織りであること
・締機(しめばた)で手作業により加工されていること
・手機(てばた)で経緯(たてよこ)の絣を合わせて織り上げていること
本場大島紬は、泥染め特有の深く渋い光沢や、軽くてシワになりにくい、しなやかな着心地が特徴です。
その高い品質と歴史的価値から、1975年(昭和50年)に国の伝統的工芸品に指定されました。
京友禅
京友禅は、友禅染めという日本を代表する染色技法を用いて、京都で制作された染め物を指します。
絵画のように華やかで多彩な色彩、そして金彩や刺繍などの豪華な装飾が特徴です。図案には、古典的な柄から現代的なものまで幅広く、熟練した職人の手仕事によって一枚一枚丁寧に染め上げられます。
その美しさは日本国内だけでなく、海外でも高く評価されており、「キモノ」の美を象徴する存在の1つです。1976年(昭和51年)に国の伝統的工芸品に指定され、現在も日本の代表的な染物として多くの人々に愛されています。
なお、友禅染めには、石川県金沢市を中心に制作される「加賀友禅」もあります。
加賀友禅は、京友禅と比較して、より写実的で落ち着いた色調が特徴です。刺繍や金彩を用いない「加賀五彩(藍・臙脂・黄土・草・古代紫)」と呼ばれる、独自の色彩で自然の美しさを表現します。
着物の価値の見分け方【証紙】

「証紙」の有無も、着物の価値を見分ける上で非常に重要なポイントです。
証紙とは、その着物が「一定の品質基準を満たしていることを証明」するものです。
すべての着物に付いているわけではなく、各産地の組合や工業組合などが実施する厳しい検査に合格した着物にのみ与えられます。
証紙には、主に以下のような情報が記載されています。
・着物の産地名
・着物の製造元
・伝統工芸品マーク
・織り方(機械織りか手織りか)
・使用されている素材(絹100%・麻など)
・染色方法(泥染め、手描き友禅など)
証紙が付いていることで、「有名な産地で作られた反物である」「伝統工芸品として認められている織物である」といった、客観的な価値を証明できるのです。
そのため、証紙のある着物は、ない着物と比較して高く評価されやすい傾向にあります。
着物を購入される際や、買取に出す際にも、証紙は価値を裏付ける重要な要素となりますので、大切に保管しておきましょう。
着物の価値の見分け方【生地の重さ】

着物の生地の重さ、とくに正絹の着物の場合も、価値を判断する1つの目安となります。
一般的に、正絹の着物は、使用されている絹糸の量が多いほど、つまり「重量感」があるほど高く評価される傾向にあります。
高評価につながる理由は、絹糸の使用量が多ければ多いほど、原材料費が高くなり、製織に手間もかかるためです。ずっしりとした重みのある正絹の着物は、それだけ贅沢に絹が使われている証であり、高級品と見なされることが多いのです。
ただし、これはあくまで正絹の場合の1つの傾向となります。
麻や木綿、ウールといった他の素材の着物には、当てはまりません。特定の技法(たとえば、非常に薄く軽いのが特徴の夏物など)についても同様です。また、重ければ重いほど良いというわけでもなく、着心地や全体のバランスも重要です。
そのため、生地の重さは、他の要素と合わせて総合的に判断するための1つの参考情報として捉えておくと良いでしょう。
着物の価値の見分け方【染め方】

着物の染色方法には、さまざまな種類があります。
どの技法で染められているかによって、手間や技術的な難易度、そして芸術性が異なるため、価値も大きく変わってくるのです。
代表的な染め方と、それぞれの価値の傾向について、ポイントを絞ってご紹介します。
・友禅染め(手描き友禅/型友禅)
・型染め(江戸小紋/紅型など)
・絞り染め(総絞りなど)
・インクジェットプリント
上記の染め方の特徴と、価値の違いについて、簡潔に見ていきましょう。
友禅染め(手描き友禅/型友禅)
日本を代表する染色技法の1つ。手描き友禅は下絵から彩色、仕上げまで一貫して職人の手作業で行われ、非常に手間と高度な技術を要するため、型友禅よりも一般的に価値が高く評価されます。
型染め(江戸小紋/紅型など)
型紙を使って模様を染め出す技法の総称です。手描きに比べて量産が可能ですが、精緻な型彫りや多色摺りには熟練の技が必要です。とくに伊勢型紙を用いた江戸小紋や、沖縄の紅型(びんがた)などは高い価値が認められます。
絞り染め(総絞りなど)
布を糸で括ったり、板で挟んだりして染料が染み込まない部分を作り、模様を表現する技法です。非常に手間がかかり、とくに生地全体に絞りを施した「総絞り」の着物は、豪華で手間がかかっている分、高く評価される傾向にあります。
インクジェットプリント
近年増えている、プリンターを使って生地に直接模様を印刷する方法です。手作業の染色に比べてコストを抑えられ、複雑な柄も比較的容易に表現できますが、伝統的な手染めの着物と比較すると、一般的に価値は低く評価されます。生地の裏面まで染料が浸透しにくいのが特徴です。
総評
職人の手作業による伝統的な染色技法は、機械による大量生産的な染色方法よりも「価値が高い」と評価される傾向にあります。
その理由は、伝統的な技法には多くの「時間」と「手間」がかかる上に、「高度な技術」も必要とされるからです。
着物の価値の見分け方【装飾】

着物に施された刺繍や金彩、螺鈿(らでん)などの装飾も、その豪華さや技術の高さによって価値を大きく左右します。
とくに手仕事による精巧な装飾は、着物の美しさを引き立て、芸術的価値を高めます。
代表的な刺繍技法としては、以下の3つが有名です。
・日本刺繍(にほんししゅう)
・蘇州刺繍(そしゅうししゅう)
・汕頭刺繍(すわとうししゅう)
日本刺繍(にほんししゅう)
仏教伝来と共に日本に伝わった刺繍技法が独自に発展したもの。撚りのかかっていない絹の「釜糸(かまいと)」に職人が手で撚りをかけながら、多彩な色彩と光沢感のある立体的な模様を刺していきます。高度な技術と手間を要する伝統技法です。
蘇州刺繍(そしゅうししゅう)
中国三大刺繍の1つで、江蘇省蘇州市発祥の伝統刺繍。極めて細い絹糸を使い、髪の毛よりも細い糸で両面刺繍を施すなど、繊細で緻密な表現が特徴です。刺繍面が平らで滑らかな仕上がりとなります。
汕頭刺繍(すわとうししゅう)
こちらも中国三大刺繍の1つで、広東省汕頭(スワトウ)市周辺発祥。西洋のレース刺繍の技法を取り入れた独特の技法で、切り抜き刺繍や立体的な刺繍など、多彩な表現が見られます。
総評
これらの手刺繍がふんだんに施された着物は、価値が高く評価される傾向にあります。
また、金箔・銀箔を貼り付ける「金彩(きんさい)」や、貝殻の内側の虹色光沢部分を文様に切り出して嵌め込む「螺鈿(らでん)」といった高度な装飾も同様です。
これらの装飾は制作に多大な時間と手間がかかるため、装飾のないシンプルな着物よりも一般的に価値が高くなります。
まとめ

この記事では、着物の価値を見分けるための8つの主要なポイント(生地・作家・老舗ブランド・伝統工芸品・証紙・生地の重さ・染め方・装飾)について、詳しく解説しました。
着物の価値は、これらの要素が複雑に絡み合って決まります。
着物本体の見た目や手触りや付属する証紙などから、ある程度の価値を推測することは可能ですが、すべての要素を正確に見極め、総合的に判断するには専門的な知識と経験が必要です。
「この着物、どれくらいの価値があるんだろう?」
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