- 着物
- 2025.06.01
着物と帯の組み合わせ方は?色・柄・格などの観点から徹底解説

着物と帯を組み合わせる際、かつては、「濃い色の着物には淡い色の帯」「淡い色の着物には濃い色の帯」を合わせるのが定番でした。
しかし最近では、さまざまなバリエーションを楽しむことが増えてきました。
それゆえに、「着物と帯のルールが複雑で、何が正解なのかわからない」「結婚式に招かれたけど、手持ちの訪問着にどんな帯を合わせればいいの?」といった風に、お悩みではないでしょうか。
着物と帯の組み合わせ方にはいくつかの基本的なルールがありますが、ポイントさえ押さえれば決して難しいものではありません。この記事では、着物と帯の「柄」「格」の基本から、お洒落に見せる色柄の選び方まで、わかりやすく解説します。
押さえておきたい「着物の格」とは

着物には「格」と呼ばれるものが存在します。
洋服を例に挙げると、TPOによってふさわしい服装は変わってきますよね。これと同様に、着物もシーンごとに適した装いが異なり、「格」で種類分けされているのです。
着物の格は、主に以下4種類に分類されます。
・礼装着(第一礼装)
・略礼装着(準礼装)
・外出着
・普段着
さっそく詳しく見ていきましょう。
礼装着(第一礼装)
着物の中で最も格が高いとされるのが、礼装着です。
礼装着には以下のようなさまざまな種類があり、着用シーンやご自身の立場によって、適した装いが変わってきます。
・打掛:「白打掛(白無垢)」と「色打掛」の2種類があり、どちらも結婚式で着用されることが多い
・黒留袖:既婚女性が着用する着物の中で最も格が高い着物
・振袖:未婚女性の第一礼装
・喪服:喪の席で着用し、黒紋付(くろもんつき)と呼ばれることもある
略礼装着(準礼装)
略礼装着は、礼装着に次ぐ格の高さを持ちます。華やかさがあるものも多く、結婚式の披露宴や入学式・卒業式など、さまざまなシーンで着用できます。
略礼装着に位置付けられる着物の例は、以下のとおりです。
・色留袖:地色が黒以外の留袖のことで、未婚既婚を問わず着用できる
・訪問着:柄が全体に入った着物で、未婚既婚問わず着用できる
・付け下げ:訪問着に次ぐ格の高さを持つ着物。訪問着よりも柄が少なく控えめな印象のものが多い
・色無地:黒以外の単色で染められた無地の着物
外出着
外出着は、略式装着ほど気負わずに、しかし普段着よりも少しかしこまった雰囲気を楽しめます。
観劇やコンサート、カジュアルなパーティーなどで着用できます。
外出着の例は、以下のとおりです。
・小紋:全体に同じ模様が繰り返されている
・付け下げ小紋:全体に模様が繰り返されており、すべての模様が上を向いている
・紬の訪問着:紬の生地に、訪問着のような絵羽模様が施されている
・絞り:生地を糸で括り付けたり器具で挟んだりすることで染まらない部分をつくり、模様を生み出した着物
・御召:織りの着物(糸を染めてから織り上げて生地にした着物)の中で最も格が高い
・更紗:主に木綿の生地に、2色以上の色で文様を染めた着物。インドが発祥とされる
普段着
普段着は、軽い外出や普段の生活で着用可能です。
普段着の主な種類として、以下が挙げられます。
・紬(つむぎ):紬糸を使った織物
・絣(かすり):糸を染める際に「括り」という作業によって染まらない部分をつくり、その染め分けた糸で織り上げることでさまざまな柄を表現した織物
・ウール:羊から取れる毛からつくった着物
・銘仙(めいせん):先染め平織りの絹織物の1種。経糸と緯糸を意図的にずらして織ることで、通常の平織りでは見られない、色の境界線がにじんだような仕上がりとなっている
・木綿:ウールと並ぶ代表的な普段着
・浴衣:夏に着用する薄手の着物
知っておきたい「帯の格」とは

帯にも着物と同じように「格」が存在します。
着物と帯の組み合わせを考えるうえで、「帯の格」を把握しておくことも重要です。
ここでは、代表的な帯として知られる以下3つについて、それぞれの特徴や格の高さを見ていきましょう。
・袋帯
・名古屋帯
・半幅帯
袋帯
袋帯(ふくろおび)は、表と裏に別の生地が使われており、それらの生地が袋状に縫い合わせられている帯です。
この構造により、お太鼓を結んだときに表地と裏地が重なり、豪華な印象になります。
袋帯は、結婚式や成人式、パーティーなどのフォーマルなシーンで使用可能です。とくに金糸や銀糸が使われているものは、華やかさがありフォーマルなシーンにぴったりでしょう。
名古屋帯
名古屋帯(なごやおび)は、袋帯に次ぐ格の高さを持ちます。
袋帯よりも短く軽いため、比較的気軽に使えるでしょう。長さが短い分、太鼓結びをするときには一重太鼓しかできません。
袋帯がフォーマルなシーンに適しているのに対し、名古屋帯はお稽古や軽いお出かけなどの比較的カジュアルなシーンで活躍します。
小紋や紬といった普段着に位置付けられる着物に合わせる場合が多いものの、すっきりとした柄の付け下げなどに合わせれば、少しかしこまった雰囲気の装いを楽しむことも可能です。
半幅帯
半幅帯(はんはばおび)は、今回ご紹介している3種類の帯の中で「最も格の低い帯」です。
名古屋帯よりもさらにカジュアルな帯として、浴衣や小紋をはじめとするさまざまな普段着に合わせて使用されます。
半幅帯は袋帯の半分の幅で織られていることから、この名前が付けられました。半分の幅となっていることで、扱いやすいのが特徴です。
長さは3m80cm前後のものが一般的ですが、最近では飾り結びなど、さまざまな結び方を楽しめるよう、4m以上に仕立てられたものもあります。
着物と帯の組み合わせは「格をそろえる」ことが基本

ここまで、着物と帯の格についてご紹介してきました。
着物と帯を組み合わせるときの基本的なポイントは、「それぞれの格をそろえる」ことです。
「格の高い着物には格の高い帯」「格の低い着物には格の低い帯」のように組み合わせると、全体的にバランスが取れた着こなしになります。
着物と帯の具体的な組み合わせ方を、以下のようにまとめました。
※以下の表はあくまでも基本的な考え方であり、着物と帯の生地やデザインによっても組み合わせ方は変わってきますので、参考としてご覧いただけますと幸いです。
袋帯 | 名古屋帯 | 半幅帯 | |
黒留袖 | 〇 | ||
色留袖 | 〇 | ||
振袖 | 〇 | ||
訪問着 | 〇 | ||
色無地 | 〇 | 〇 | |
付け下げ | 〇 | 〇 | |
小紋 | 〇 | 〇 | 〇 |
紬 | 〇 | 〇 | 〇 |
浴衣 | 〇 |
表からわかるように、袋帯は幅広い着物と合わせて使用できます。ただし、袋帯のデザインによって、適した着物が変わってくるため注意が必要です。
たとえば、華やかなデザインの袋帯には、「黒留袖」「色留袖」「振袖」「訪問着」「付け下げ」を組み合わせるのが一般的です。
一方で、控えめなデザインの袋帯の場合、「訪問着」「付け下げ」「色無地」「小紋」と組み合わせるのがよいとされています。
着物と帯の組み合わせ方【色】

着物と帯の格をそろえることを前提としながら、「色」にも着目して組み合わせを考えると、素敵な着こなしになります。
具体的には、以下の点を意識しながら着物と帯の組み合わせを考えるとよいでしょう。
・白系の帯を選ぶ
・反対色で組み合わせる
・同系色で組み合わせる
・着物の柄の色に合わせて帯を選ぶ
白系の帯を選ぶ
「どのような色の帯を組み合わせたらよいかわからない」「帯を初めて購入する」といった方から人気なのが、白やクリーム系の帯です。
白やクリーム系の帯は、幅広い地色の着物にも合わせやすいオールマイティさが魅力です。
白やクリーム系とひと言でいっても、「青みのある白」「黄色みがかなり強いクリーム色」など、色合いが少しずつ変わってきます。
お持ちの着物や着用シーン、ご自身の好みなどを考慮したうえで、どのような色合いの帯がよいか判断してみてくださいね。
反対色で組み合わせる
着物と帯を反対色で組み合わせる方法は、昔からの定番です。反対色を選ぶことで、それぞれの色が持つ魅力を引き立て合ってくれます。
たとえば、濃い地色の着物に淡地の帯を合わせると、それぞれが際立ち、メリハリのある着こなしになるでしょう。
一方で、淡い地色の着物に濃地の帯を合わせた場合、帯が全体の印象を引き締めてくれるだけでなく、モダンな印象のコーディネートに仕上がります。
同系色で組み合わせる
コーディネート全体に統一感を持たせたいときは、同系色で組み合わせるのもオススメです。
たとえば、濃地の着物に濃地の帯を合わせると、クールで洗練された装いになります。
反対に、淡地の着物に淡地の帯を合わせた場合、女性らしさが際立ち、やわらかく上品な印象になります。
同系色で組み合わせるときのポイントは、着物と帯を完全に同じ色にするのではなく、少し濃淡を付けることです。そうすることで、お洒落でこなれた着こなしになります。
着物の柄の色に合わせて帯を選ぶ
着物の柄に使われている色と、帯の色を合わせる方法もあります。
具体的な例としては、「地色がベージュの着物に緑色の柄が施されている場合、緑色の帯を選ぶ」といったものです。
このような方法で組み合わせを考えることで、柄や帯の緑色がコーディネートのアクセントになりながらも、全体に統一感が生まれます。
この方法は、多くの色が使われている小紋などを着用する際、とくに役立ちますよ。
着物と帯の組み合わせ方【柄】

着物と帯のどちらかが無地であれば、柄の組み合わせを心配する必要はありません。しかし、着物と帯の両方に柄が入っている場合は、組み合わせに配慮する必要があります。
柄の入った着物と帯を組み合わせるときのポイントは、以下のとおりです。
・着物と帯の柄の大きさは同じにしない
・柄のテーマをそろえる
それぞれについて、順番に見ていきましょう。
着物と帯の柄の大きさは同じにしない
簡単に意識できるポイントとして、着物と帯の柄の大きさを同じにしないことが挙げられます。
たとえば、大きな柄の入った着物に小柄の帯を合わせることで、メリハリがありすっきりとしたコーディネートになります。
「大柄の着物と大柄の帯」「小柄の着物と小柄の帯」のような同じ大きさ同士の組み合わせが、必ずしも駄目なわけではありません。あえて柄の大きさを一緒にすることで、お洒落な着こなしになったり、新しい発見につながったりする場合もあります。
ただ、柄の組み合わせ方を不安に感じられている方には、ここでご紹介したポイントを取り入れていただくことをオススメします。
柄のテーマをそろえる
着物と帯の柄のテーマに統一感がないと、ちぐはぐな印象になってしまうことがあるので注意が必要です。
たとえば、「菊が描かれた着物と、バラが描かれた帯」のように、和花と洋花を組み合わせると違和感を覚える可能性があります。
そのほかに、「春の花が描かれた着物と、秋の花が描かれた着物」のように季節感が合っていない場合も、不自然な印象になる恐れがあります。
和花もしくは洋花のどちらかに統一したり、同じ季節の草花が描かれた着物と帯を選んだりするなど、柄のテーマをそろえることで全体がまとまった印象になるでしょう。
着物と帯の組み合わせ方【染め・織り】

着物には「染め着物」と「織り着物」、帯には「染め帯」と「織り帯」と呼ばれるものがあり、これらの組み合わせ方によって印象が変わってきます。
「染め着物」と「織り着物」には、それぞれ以下の特徴があります。
・染め着物
生地を織り上げてから染めた着物。後から柄を描くため、やわらかく華やかな表現が得意です。
・織り着物
糸を染めてから織り上げた着物。先染めならではの、しっかりとした地風と奥行きのある風合いが特徴です。
これら2つのうち、よりフォーマルなのは「染め着物」です。
また、「染め帯」と「織り帯」には、以下のような特徴があります。
・染め帯
生地を織り上げてから色や柄を付けた帯です。しゃれもの(お洒落着)に合わせることが多く、やわらかい印象を与えます。
・織り帯
糸を染めてから織り上げた帯です。金糸や銀糸などを使った豪華な袋帯は、フォーマルな場で用いられ「格が高い」とされます。一方で、普段使いのカジュアルな織りの帯あります。
このように、一概にどちらがフォーマルとはいえません。
しかしながら、格の高いシーンでは金銀糸の入った「織りの袋帯」、お洒落着としては「染め帯」が選ばれることが多い、と覚えておくとよいでしょう。
ここからは、代表的な組み合わせについて、それぞれの印象を解説します。
・「染め着物」と「染め帯」
・「染め着物」と「織り帯」
・「織り着物」と「染め帯」
・「織り着物」と「織り帯」
「染め着物」と「染め帯」
「染め着物」と「染め帯」の組み合わせは、女性らしさが際立つやわらかい印象になります。
気品あるコーディネートに仕上がるため、社交着としての装いにぴったりでしょう。
「染め着物」と「織り帯」
「染め着物」と「織り帯」は定番の組み合わせで、礼装着からお洒落着まで、幅広く用いられています。
フォーマルな染め着物に豪華な織り帯を合わせることで、全体が格調高くまとまります。
「織り着物」と「染め帯」
「織り着物」と「染め帯」も、昔から定番の組み合わせです。
たとえば、大島紬や結城紬などの織り着物に、塩瀬(しおぜ)の染め帯(新潟県の五泉地方を中心につくられている、手描き友禅の代表的な染め帯)を合わせる方法があります。
「織り着物」と「染め帯」は、どちらもカジュアルなグループ同士の組み合わせのため、全体に統一感が生まれます。
「織り着物」と「織り帯」
「織り着物」と「織り帯」の組み合わせは、比較的カジュアルな印象になることが多く、一般的には「街着」として楽しめます。
ただし、着物や帯の色や柄によっては、お稽古着や社交着として用いられることもあります。
まとめ

この記事では、「着物と帯の組み合わせ方」について解説しました。
着物と帯には「格」が存在し、組み合わせる際には格をそろえるのが基本です。この基本を押さえたうえで、色や柄の観点から組み合わせを考えていきます。
色の組み合わせについては、白系の帯であれば、幅広い着物に対応可能です。着物と帯を反対色で組み合わせたり、同系色で合わせたりする方法もあります。そのほかに、着物の柄に使われている色の帯を選ぶことも1つの方法です。
着物と帯の両方に柄が入っている場合、柄の大きさを同じにしないことと、柄のテーマをそろえることを意識しましょう。
なお、着物と帯の組み合わせについて調べている方の中には、「新しい着物や帯を購入するため、これまで使用していたものを手放そうか検討している」といった方も、いらっしゃるかもしれません。
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