- 着物
- 2025.06.02
手縫いの着物とミシン縫いの着物|縫い方&違いを知っておこう

着物は和裁士による手縫いが伝統ですが、近年はミシンで仕立てられた着物も多く見られます。
「手縫い着物とミシン縫い着物って、見た目や着心地、価格でどう違うの?」
「仕立て直しができるのは、手縫い着物とミシン縫い着物のどっち?」
そのような疑問をお持ちではありませんか?
この記事では、手縫い着物とミシン縫い着物の具体的な違い、それぞれのメリット・デメリットを徹底比較します。さらに、簡単な見分け方や、初心者の方がミシンで着物作りに挑戦する方法もご紹介。
ぜひとも、ご自身に合った着物選びの参考にしてください。
手縫いの着物とは

手縫いの着物とは、国家資格を持つ和裁士が伝統技術を用いて、すべて手作業で仕立てる着物のことです。
その針仕事は、単に生地を縫い合わせるだけではありません。上質な生地の風合いを損なわないよう、また、着心地が良くなるよう、部位ごとに縫い方を使い分ける繊細な技術が凝縮されています。
さらに、着る人の体型や好みに合わせて細かく調整できるオーダーメイドの仕立ても可能。ご自身だけの一着が楽しめる点も、手縫いならではの醍醐味です。
ミシン縫いの着物とは

ミシン縫いの着物とは、縫製工程の大部分をミシンで行う着物のことです。
明治時代にミシンが普及し、より効率的に着物を仕立てる手法として広まりました。
手縫いが針を斜めに入れるのに対し、ミシンは生地に垂直に針を落として縫い上げるのが特徴。これにより、均一で丈夫な縫い目が生まれます。
近年では、普段着の着物や浴衣だけでなく、成人式の振袖でもミシン縫いが選択肢の1つになっています。その多くは海外工場で効率的に生産されるため、私たちは手頃な価格で着物を楽しめるようになりました。
手縫いとミシン縫いの違い

手縫いとミシン縫いの着物は、見た目や品質に明確な違いがあります。この違いを知ることで、着物選びの精度がぐっと上がります。
ここでは「見た目の違い」と「着心地・耐久性の違い」という2つのポイントに絞って、その特徴を詳しく比較していきましょう。
見た目の違い|縫い目の美学
着物の見た目を大きく左右するのが「縫い目」の処理です。
手縫いの着物は、縫い目が表からほとんど見えないように仕上げられます。これは「キセをかける」という和裁独自の技術で、縫い代をわずかに折り込むことで縫い目を隠す、職人技のなせる業です。また、袖や裾の端を見ると、手仕事の証である「くけ」の小さな縫い目が、ポツポツと等間隔に並んでいるのが特徴です。
一方でミシン縫いは、縫い目が均一でまっすぐ見えるのが特徴。「キセ」がないため縫い目は隠れず、端の処理も直線的なステッチで仕上げられます。
着心地と耐久性の違い|生地への優しさ
着心地や長く着るための耐久性にも、縫い方による大きな違いが生まれます。
手縫いは、生地に対して針を斜めに入れるため、針穴が小さく目立ちません。縫い糸には適度な「遊び(ゆるみ)」が持たせてあり、生地の伸縮に合わせてしなやかに動くため、着心地が良くなります。さらに、強い力がかかった際には、生地が破れる前にこの「遊び」のある糸が先に切れることで、高価な生地そのものを守ってくれるのです。
対してミシン縫いは、針を垂直に刺し、上下2本の糸でがっちりと縫い上げます。そのため縫い目は非常に丈夫ですが、遊びがなく、強い力がかかると糸は切れず、生地の方が裂けてしまう場合があります。
手縫いの着物|メリット

手縫いの着物には、ミシン縫いの着物にはない、時代を超えて愛され続ける「理由」があるのです。
それは単なるノスタルジーではなく、「サステナビリティ」「素材美」「フィット感」という、着物本来の価値に根差しています。
ここでは、その価値を形作る3つの大きなメリットを詳しく解説します。
親から子、子から孫へ。受け継げる「仕立て直し」の文化
手縫いの着物は、持ち主の寸法に合わせて「何度でも仕立て直しができる」ように作られています。
この仕立て直しこそ、1枚の着物を大切に長く着続ける、日本のサステナブルな文化そのものです。
それを可能にするのが、和裁の技術です。一本の糸でするすると解けるように縫い、生地を切り落とさずに内側へ織り込むため、解いた後は再び長方形の布に戻ります。
ご自身の寸法に合わなくなっても、また次の世代へ譲るときも、その人に合わせて完璧にリサイズできる。この柔軟性こそ、手縫いの着物が世代を超えて愛される最大の理由です。
生地のポテンシャルを解放する、本物の「高級感」
手縫いの着物が放つ「高級感」は、単に高価な素材を使っているからだけではありません。それは、職人の手仕事が、生地の持つポテンシャルを最大限に引き出すことで生まれます。
熟練の和裁士は、絹の光沢や紬の風合いといった生地の特性を見極め、その美しさが最も映えるよう、一針一針の力加減を調整します。
有名産地の高級な織物ほど、手縫いで仕立てられるのはこのためです。まさに、最高の食材が最高の料理人を求めるのと同じといえるでしょう。
オーダーメイドが生む、究極の「着心地」
手縫いの着物は、着る人の体型や骨格に合わせてミリ単位で採寸し、仕立てられる完全なオーダーメイド。そのため、体に吸い付くように馴染み、着る人を最も美しく見せます。
さらに、縫い目に持たせた絶妙な「遊び」が、体の動きに合わせて柔軟に伸縮。立ち座りや歩行といった動作を妨げず、着崩れしにくいので、長時間でもストレスなく過ごせます。
体に完璧にフィットする安心感と、動きを妨げない快適さ。この2つが合わさって、究極の着心地が生まれるのです。
手縫いの着物|デメリット(注意点)

最高品質を誇る手縫いの着物ですが、その価値と引き換えに、理解しておくべき点が2つあります。それは「時間」と「価格」です。
この2点はデメリットというより、職人の手仕事に対する敬意の証ともいえます。納得の一着を手に入れるために、ぜひご確認ください。
【時間】一針に心を込める、待つ時間も仕立てのうち
手縫いの着物は、すべての工程が職人の手作業で行われるため、完成までに相応の時間を要します。
生地を準備する「水通し」や「地のし」に始まり、柄合わせやミリ単位の裁断、そして一針一針縫い進める作業は、まさに布との対話。急いで仕上げられるものではなく、数週間から、長い場合は数か月かかることも珍しくありません。
さらに近年は、専門技術を持つ和裁士の数そのものが減少しており、仕立ての待ち時間が長くなる一因にもなっています。
【価格】未来へ受け継ぐ、技術への対価
手縫いの着物の価格は、その大部分が職人の「技術料」です。
一人前の和裁士になるには長い修業期間が必要であり、ミシンのように大量生産もできません。そのため、その1枚に込められた時間と熟練の技に対して、相応の対価が求められるのです。
とはいえ最近では、人件費の安い海外で手縫いを行うことで、価格を抑えた「海外手縫い」の着物も増えています。国内の手縫いよりは手頃で、ミシン縫いよりは高品質という、中間的な選択肢として注目されています。
ミシン縫いの着物|メリット

ミシン縫いの着物には、手縫いにはない実用的なメリットが多数あります。
とくに「丈夫さ」「速さ」「価格」の3点は、着物をさらに身近なものにしてくれる大きな魅力です。
1つずつ、見ていきましょう。
気兼ねなく洗える「丈夫さ」
ミシン縫いの着物は、上下2本の糸でしっかりと縫い合わせるため、縫い目が非常に丈夫です。
この頑丈さは、自宅で手入れをしたい場合にとくに大きなメリットとなります。木綿やポリエステルといった洗える素材の着物や浴衣なら、洗濯機で丸洗いしても糸がほどける心配は、ほとんどありません。
汗をかく季節でも、お手入れの手間を気にせず、Tシャツ感覚で気軽に着られるのは嬉しいポイントです。
すぐに手に入る「仕立ての速さ」
ミシンを使えば、手縫いとは比較にならないスピードで縫い進められます。そのため、注文から完成までの期間が短いのがメリットです。
ただし、注意したいのが「納期」です。
ミシン縫いの多くは海外の工場で縫製されるため、縫う時間は短くても、日本への輸送期間がかかります。
そのため、注文してから手元に届くまでの総日数では、国内で仕立てる手縫いと大差ないケースもあることは知っておきましょう。
初心者にも嬉しい「手頃な価格」
手頃な価格は、ミシン縫いの着物における「最大のメリット」といえます。
機械による大量生産が可能なため、職人の技術料がかかる手縫いに比べて、ぐっと費用を抑えられます。
手頃な価格のおかげで、「着物生活を始めたいけれど初期費用が……」と悩む初心者の方でも、第一歩を踏み出しやすくなるのです。また、お稽古用や普段着用に複数枚そろえたいときなど、さまざまなシーンで私たちの心強い味方となってくれます。
ミシン縫いの着物|デメリット

手軽さが魅力のミシン縫いですが、長く付き合う上では知っておきたい注意点もあります。
とくに「生地への影響」と「仕立て直しの可否」は重要なポイント。
メリットと合わせて理解し、後悔のない着物選びをしましょう。
ほどくと目立つ「針穴」
ミシン縫いは、生地に対して針を垂直に強く打ち込むため、縫い目に沿ってくっきりと針の穴が残ります。
手縫いの針穴が小さく目立たないのに比べ、ミシンの針穴は目視ではっきりと確認できるほど。そのため、たとえ縫い目をほどいたとしても、生地には穴が開いた状態が続いてしまいます。
親子代々では着られない「仕立て直しの難しさ」
ミシン縫いの着物は、基本的に仕立て直しができません。この点が「手縫いとの最も大きな違い」です。
頑丈な縫い目は解くこと自体が難しく、前述のとおり針穴も残るため、寸法直しやリメイクにはまったく向いていません。
手縫いの着物なら可能な「親から子へ、そして孫へ」と受け継いでいくことは難しく、あくまでその寸法が合う人のための「一代限りの着物」と考える必要があります。
丈夫さの裏返し「生地への負担」
メリットである「縫い目の丈夫さ」は、時としてデメリットにもなります。
手縫いの縫い目には、力がかかった際に衝撃を逃がす「遊び」がありますが、ミシン縫いには、この遊びがありません。そのため、正座などで生地が強く引っ張られると、その力は逃げ場なく直接生地にかかります。
結果、頑丈な縫い糸は切れず、生地の方がビリッと破れてしまう危険性があるのです。これは、生地より先に糸が切れてくれることで布地を守る、手縫いの思想とは逆の現象です。
初心者が手縫いで着物を縫える?

着物が好きな方なら、「いつかは自分の一着を手縫いで作りたい」と憧れますよね。
その気持ちは、非常に素敵です。
ただ、知っておきたいのは、着物を仕立てる「和裁」が、単なる裁縫ではなく、日本の美意識が凝縮された奥深い伝統技術であることです。
プロの和裁士は生地の特性を読み解き、その魅力を最大限に引き出すために、ミリ単位の採寸や縫い目の力加減といった、目に見えない無数の「さじ加減」を駆使します。
生地を傷めず、着る人の体に寄り添うように「遊び」を持たせる。
それは、長年の経験で培われる、まさに職人技なのです。
だからこそ、もしご自身が「長く大切に着られる本格的な1枚」を望むのであれば、まずはその道のプロに敬意を込めて依頼するのが、「最も確実な選択」といえます。
初心者が着物を縫いたい場合はミシン縫いがオススメ

◇【初心者向け】ミシンで挑戦!自分だけの着物の作り方
「本格的な手縫いは難しそう。でも、やっぱり自分で縫ってみたい!」
そのような方には、ミシンでの着物作りがオススメです。手縫いほど専門的な技術は不要で、ミシンさえあれば、世界に一着だけのオリジナル着物を仕立てることが可能です。
まずは、比較的安価で扱いやすい木綿生地で「浴衣」から挑戦してみてはいかがでしょうか。
この章では、ミシンで浴衣を一着縫い上げるまでの流れを、4つのSTEPでご紹介します。
STEP1:生地を用意する
まずは、着物の材料となる生地を選びましょう。初めて挑戦されるなら、扱いやすくお手入れも簡単な「木綿(コットン)」や「麻(リネン)」が最適です。
本格的な反物(着物用の生地)でなくても、手芸店などで販売されている、幅110cm程度の洋裁用生地で問題ありません。
まずは5〜6mほど用意すれば、ご自身の浴衣を1枚作ることが可能です。
好きな色や柄を選んで、イメージを膨らませましょう。
STEP2:生地の下準備をする(水通し・地のし)
生地の準備ができたら、縫い始める前に「水通し」と「地のし」という下準備を行います。
この作業は、洗濯による生地の縮みを防ぎ、仕上がりを美しくするための非常に重要な工程です。
1. 水通し
たらいや浴槽に水を張り、畳んだ生地を1時間ほど浸します。
2. 地のし
生地を軽く脱水して干し、生乾きの状態になったら、裏側からアイロンをかけて生地の織り目をまっすぐに整えます。
STEP3:生地を裁断する
下準備が終わった生地を、各パーツに裁断していきます。着物は洋服と違い、ほとんどのパーツが直線で構成されているため、初心者でも比較的取り組みやすいのが特徴です。
浴衣は主に、「袖(左右2枚)」「身頃(左右2枚)」「衽(おくみ)(左右2枚)」「衿(1〜2枚)」といったパーツからなります。
ご自身のサイズに合った裁断図は、市販の和裁入門書や、インターネットで無料公開されているものなどを探してみましょう。
STEP4:ミシンで縫い合わせる
各パーツを縫い合わせれば、いよいよ完成です。
大まかな手順は、以下のとおりです。
・パーツごとに袖や衿などを先に縫う
・身頃の背中心と脇を縫い、衽(おくみ)を付ける
・全体を合体させ、身頃に袖と衿を縫い付ける
とはいえ、実際の縫い方には、縫う順番や細かいコツが多くあります。
詳しい手順については、YouTubeの解説動画や、写真付きで丁寧に説明しているブログ・書籍などをあわせて参考にするのが、成功への一番の近道です。
ぜひ、ご自身だけの一着を完成させてください。
まとめ
〜 手縫いとミシン、それぞれの良さを知って着物をさらに楽しく 〜
この記事では、手縫いとミシン縫いの着物の違いから、それぞれのメリット・デメリット、さらにはご自身で着物を縫う方法まで詳しく解説しました。
手縫いには職人の技と想いが込められた特別な価値があり、ミシン縫いには着物を日常にする手軽さと楽しさがあります。
それぞれの良さを理解し、TPOや目的に合わせて賢く選ぶことで、ご自身の着物ライフは、きっとさらに豊かになるはずです。
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