- 着物
- 2025.06.03
着物の春夏秋冬|四季にふさわしい柄や小物で和装を楽しむ

着物は春夏秋冬を通して、さまざまに楽しめるのが魅力。
豊かな四季の風情を感じながら、着物をお洒落に着こなしてみたいものですよね。
しかし、季節に合わせた着物のルールは少し複雑で、「いつ、何を着ればいいの?」と悩む方も少なくありません。
そこでこの記事では、季節ごとの着物の楽しみ方を徹底解説。基本ルールから、季節を彩るコーディネート術まで、この記事でマスターできます。
【この記事でわかること】
● 季節で着分ける3つの基本ルール(袷・単衣・薄物)
● 春夏秋冬・季節ごとの具体的な着物の着こなし術
● 季節を先取りする柄や色の選び方
● 夏着物と浴衣の具体的な違い
着物の春夏秋冬|着物はどう季節を表現する?

洋服が半袖や長袖と形で季節に対応するのに対し、着物は基本的に1年中同じ形です。
では、どうやって四季の変化を楽しんでいるのでしょうか。
そこには、大きく分けて2つのポイントがあります。
1つは、生地の「素材」や「仕立て」による、快適に過ごすための機能的な衣替え。もう1つは、見た目の「柄」や「色」で季節感を表現する、心で楽しむ美的な衣替えです。
この2つの要素を理解することが、着物を粋に着こなす第一歩。
まずは、機能的な衣替えの基本から見ていきましょう。
春夏秋冬によって異なる着物の種類

◇【着物の衣替えルール】季節で使い分ける3種類の「仕立て」
着物は、季節に合わせて快適に過ごせるよう、生地や「仕立て方」が変わります。この季節ごとの仕立ての違いこそが、着物の「衣替え」の基本ルールです。
着物の仕立てには、主に以下の3種類があります。この仕立てを季節に応じて着分けることで、1年を心地よく、そして美しく過ごせるのです。
● 袷(あわせ)
● 単衣(ひとえ)
● 薄物(うすもの)
さっそく、一つひとつ見ていきましょう。
袷(10月~5月)|裏地のある「最も基本」となる着物
「袷」は、表地と裏地の2枚の生地を縫い合わせて仕立てた着物です。風を通しにくく暖かいため、肌寒さを感じる10月から翌年の5月までと、最も長い期間にわたって着用されます。
初めてご自身の着物を仕立てるなら、着用機会の多いこの「袷」を選ぶのが一般的です。裏地がある分、丈夫で高級感があるのも袷ならではの魅力です。
単衣(6月・9月)|裏地のない「風通しの良い」着物
「単衣」は、その名のとおり裏地を付けず、1枚の布で仕立てられた軽やかな着物です。暑さに向かう6月と、残暑の厳しい9月という、季節の変わり目に着用します。
近年は気候に合わせて、5月の暑い日や10月の汗ばむ陽気の日などに着用することも増えました。
合わせる帯に迷うときは、その日の気温で決めるのがオススメです。たとえば、汗ばむ日なら夏帯、少し肌寒い日なら秋らしい色柄の帯、というように柔軟に楽しみましょう。
薄物(7月~8月)|真夏を涼やかに過ごす「透け感のある」着物
「薄物」は、単衣の一種で、最も暑い7月と8月に着用します。
最大の特徴は、「絽(ろ)」「紗(しゃ)」「羅(ら)」に代表される、透け感のある涼しげな生地です。織り目が粗く風通しが抜群で、見た目にも涼を届けます。
最高級の麻織物である宮古上布や越後上布も、この薄物の一種です。温暖化の影響で9月に入っても厳しい暑さが続く年は、気候を優先して薄物を着る方も増えています。
春夏秋冬を着物で楽しむコツ

◇【季節別】春夏秋冬の着物コーディネート完全ガイド
着物の「衣替え」の基本ルールが理解できれば、いよいよ季節ごとのコーディネートを考えていきましょう。
着物の柄は、季節を少し先取りするのが「粋」とされ、装いに奥行きが生まれます。
ここでは「春・夏・秋・冬」、それぞれの季節を楽しむための着こなし術を解説します。ふさわしい着物の種類から柄と色の選び方、小物の合わせ方まで、具体的なコツをご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
春の着こなし(3月~5月)| 希望にあふれる、やわらかな装い
花々が咲き誇り、心も華やぐ春。入学式などのお祝いの席も多いこの季節は、明るくやわらかな雰囲気のコーディネートが素敵です。
・着物の種類
基本は裏地のある「袷(あわせ)」を着用します。
・春の柄
桜・桃・藤・牡丹・菖蒲など。春を代表する桜の柄は、満開になる前の三分咲き頃までに着るのが、最も美しいとされます。
・春の色
ピンク・藤色・若草色など、春の日差しに映えるパステルカラーがオススメです。
・小物・コーデ術
帯や半衿にも春らしい花々の柄を取り入れてみましょう。帯結びを普段のお太鼓結びから、少し華やかな「みやこ結び」や「文庫結び」に変えてみるだけで、ぐっと春らしい着こなしになります。
夏の着こなし(6月~9月)| 五感で涼を呼ぶ、爽やかな装い
暑い夏は、素材や見た目の清涼感を大切に、涼やかな着物の着こなしを心がけましょう。
・着物の種類
6月は「単衣(ひとえ)」、7月・8月は「薄物(うすもの)」、9月は再び「単衣」が基本です。絽や紗を2枚重ね、透け感の美しさを楽しむ「紗合わせ」は、6月や9月にぴったりの贅沢なお洒落です。
・夏の柄
陽花・朝顔・竹・流水・魚など。あえて雪の結晶や雪輪といった冬の柄を取り入れ、見た目の涼しさを演出するのは上級者のテクニックです。
・夏の色
水色や白といった淡い色や、寒色系、モノトーンなどが涼しげな印象を与えます。
・小物・コーデ術
帯も絽や紗の夏帯を合わせると、統一感のある涼やかな装いに。帯揚げをあえて使わず、すっきりと見せるコーディネートも粋です。
秋の着こなし(9月~11月)| こっくりと深まる、豊かな実りの装い
実りの秋。落ち着いた中にも、豊かさを感じさせるコーディネートが似合います。
・着物の種類
残暑の厳しい9月は「単衣」、涼しくなる10月からは「袷」に衣替え。日中は汗ばむこともあるため、気候に合わせて柔軟に着分けるのがポイントです。
・秋の柄
萩・桔梗・紅葉・菊・葡萄・月など。お彼岸を過ぎたあたりから取り入れるのが一般的です。
・秋の色
赤・茶・緑・オレンジなど、こっくりとした深みのあるアースカラーを選ぶと秋らしさが増します。
・小物・コーデ術
レースの羽織を1枚持っておくと、朝晩の気温差対策とお洒落が両立できて非常に重宝します。9月の単衣に、深みのある色の帯を合わせるだけで、ぐっと秋らしい雰囲気になります。
冬の着こなし(12月~2月)| 暖かさをプラスする、凛とした装い
寒さの厳しい冬は、防寒対策とお洒落を両立させるのが腕の見せどころです。
・着物の種類
基本は「袷」を着用します。普段着なら暖かいウール素材も人気です。
・冬の柄
松・椿・南天・菊・雪輪など。お正月には、松竹梅や南天といった縁起の良い吉祥文様も素敵です。梅の柄は、お正月が過ぎてから、春を待つ気持ちを込めて先取りで取り入れます。
・冬の色
赤や深緑、ベージュなど、見た目にも温かみのある色がオススメです。
・小物・コーデ術
羽織、和装コート(道行・道中着)、ショールなどでしっかりと防寒を。着物は袖周りが大きく開いているため、アームウォーマーを取り入れるのも有効です。帯は透け感のある夏物を避けましょう。
春夏秋冬に関係なく着られる着物の柄(通年柄)

◇ 季節を問わず楽しめる「通年柄」も知っておこう
季節感のある柄を選ぶのが着物の醍醐味ですが、一方で、1年を通していつでも着られる便利な「通年柄(つうねんがら)」も存在します。
1つ持っておくと、コーディネートの幅がぐっと広がりますよ。
代表的な通年柄には、以下のようなものがあります。
・幾何学模様
市松・縞(しま)・麻の葉・青海波(せいがいは)など、特定の季節を連想させないデザインです。モダンで洗練された印象を与え、帯や小物も合わせやすいのが魅力です。
・吉祥文様(きっしょうもんよう)
鶴亀、鳳凰(ほうおう)、宝尽くしなど、お祝いの気持ちを表す縁起の良い柄です。結婚式などのおめでたい席で、季節を問わず着用されます。
・有職文様(ゆうそくもんよう)
七宝(しっぽう)、亀甲(きっこう)、花菱(はなびし)など、平安貴族の装束にも使われた格調高い古典柄です。こちらも季節を選ばずに使えます。
・器物文様(きぶつもんよう)
扇や楽器、御所車(ごしょぐるま)などをデザインした柄です。こちらも特定の季節感がないため、通年で楽しめます。
・吹き寄せ(ふきよせ)
さまざまな種類の葉や花が、風で一箇所に集められた様を描いた美しい柄です。主に秋の柄とされますが、描かれる要素によっては通年で使える場合もあります。
夏着物と浴衣の違い

◇ 【夏の豆知識】夏着物と浴衣、どう違う?
夏の装いの代表格、「夏着物」と「浴衣」。
一見似ていますが、実は「明確な違い」があります。
そのルーツを知ると、違いは一目瞭然です。
浴衣は、もともと平安貴族がお風呂に入る際に着た「湯帷子(ゆかたびら)」が起源。それが湯上り着、そして夏の夕涼みのための「カジュアル着」へと変化したものです。
一方、夏着物はあくまで「着物」として、お出かけ着のルールに則って着用します。
具体的な違いを、下の表で比べてみましょう。
夏着物(お出かけ着)
位置づけ | フォーマルに近い外出着 |
着方 | 肌着と長襦袢の上に着る |
素材 | 絽や紗などの正絹、ポリエステルなど |
足元 | 足袋を履き、草履を合わせる |
合わせる帯 | 名古屋帯、袋帯、半幅帯など |
浴衣(カジュアル着)
位置づけ | 湯上り着・夏の普段着 |
着方 | 基本は肌着の上に着る |
素材 | 主に木綿、麻、ポリエステルなど |
足元 | 素足に下駄を合わせる |
合わせる帯 | 半幅帯、兵児帯 |
一番の違いは「長襦袢を着るかどうか」と覚えておくとわかりやすいでしょう。
長襦袢と足袋を身に付けるのが夏着物。両者を省略してラフに着るのが浴衣、という基本を押さえておけば、迷うことはありません。
TPOに合わせて正しく着分けることで、夏の和装がさらに楽しくなりますよ。
まとめ
〜 四季の移ろいを、着物とともに 〜
この記事では、日本の美しい四季を着物で楽しむための、具体的なルールとコーディネート術を詳しく解説しました。
まず基本となるのが、季節ごとの仕立ての違いです。
肌寒い季節には裏地のある「袷(あわせ)」、季節の変わり目には軽やかな「単衣(ひとえ)」、そして真夏には涼しげな「薄物(うすもの)」を着分けるのが、四季の移ろいを快適に過ごすための知恵です。
さらに、着物の醍醐味は、柄や色、小物で「季節感を表現すること」にあります。
実際の季節より少しだけ早く柄を取り入れる「先取り」のお洒落や、帯締め・帯揚げ・半衿といった、小さな面積で季節を演出する繊細な美意識は、着物ならではの楽しみ方です。
今回ご紹介したルールは、着物と四季をより深く楽しむための道しるべです。近年は気候の変動も大きいため、ルールを基本としつつも、その日の気温やご自身の体感に合わせて柔軟にアレンジすることも、現代の着物の楽しみ方の1つといえるでしょう。
この記事が、読者様の「着物こよみ」を作るきっかけとなれば幸いです。
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