- 着物
- 2025.05.29
大島紬の見分け方とは?本物と偽物の違いや価値の高さを見分けるときのチェックポイント

希少性の高い高級紬として広く知られる「大島紬」は、その人気ゆえに偽物が出回っているのも事実です。
また、本物の大島紬であっても、絣模様の緻密さや織り方など、さまざまな要素によってその価値は大きく変わります。
この記事をご一読いただければ、本物の大島紬が持つ特徴と価値判断の核心(生地・マルキ・証紙)がわかり、さらに混同しやすい他の織物との違いも明確になります。
本物の大島紬の見分け方を正しくお知りにたい方、これから大島紬の購入をご検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。
大島紬とは?

最初に「大島紬」がどのような織物なのか、その基本的な特徴と魅力を解説します。
大島紬は、主に鹿児島県の奄美大島や鹿児島市を中心に生産される織物です。
その精巧な技術と芸術的な美しさは高く評価されており、日本国内では、フランスの「ゴブラン織」やイランの「ペルシャ絨毯」と並び称され、世界三大織物の1つといわれています。
大島紬は、結城紬と並ぶ高級紬の代表でもあります(結城紬については記事後半で解説)。
ここからは、以下2点にフォーカスして、大島紬の特徴を見ていきましょう。
・大島紬と認められるための条件
・風合い
大島紬と認められるための条件
大島紬が「本場大島紬」として認められるためには、以下の厳格な条件をすべて満たす必要があります。
・絹100%であること
・先染め手織りであること
・平織りであること
・締機(しめばた)を使い手作業で加工されていること
・手機(てばた)で織られていること
※機械織りのものも一定の条件を満たせば「大島紬」として流通しますが、「本場大島紬」を名乗れるのは、上記の条件をすべて満たした手織りのものだけです。
「先染め」とは、生地になる前の糸の段階で染色してから、織物の生地に仕立てる染色技法です。生地を仕立ててから染める「後染め」とは対照的な技法として知られています。
「平織り 」は、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を1本ずつ交差させて織られた織物のことです。透け感があまりなく、丈夫で破れにくいのが特徴です。
「締機」は大島紬特有の美しい模様を表現する上で、重要な役割を果たします。大島紬には織りの工程が2段階あります。具体的には、1段階目で絹糸に綿糸を織り込んで染まらない部分を作り、2段階目でその染め分けた糸を使って生地を織るという流れです。締機は、1段階目の工程で活躍します。
「手機」は手足で操作する織機です。実は、機械織りのものも一定の条件を満たしていれば“大島紬”と認められますが、手機を使って織られていて、なおかつ上記でご紹介した条件をすべて満たしたものだけが“本場大島紬”として認められます。
風合い
本場大島紬は、絹100%ならではの優雅な光沢と、軽くてしなやかな肌触りが特徴です。
シワになりにくく、着れば着るほど体に馴染むといわれています。また、非常に丈夫で、「親子三代(150年~200年)にわたって着られる」といわれるほど、優れた耐久性も兼ね備えています。
大島紬の種類

大島紬とひと言でいっても、さまざまな種類の「色」や「柄」が存在します。
ここでは、代表的な色や柄をご説明します。
大島紬の価値の高さにも関わってくる要素なので、ぜひご覧ください。
「色」の種類
かつて大島紬といえば、黒を基調とした色合いが主流でしたが、近年では技術の進化と共に、多様な色合いのものが作られています。
主な色の種類は、以下のとおりです。
・泥大島(どろおおしま)
・白大島(しろおおしま)
・色大島(いろおおしま)
・藍大島(あいおおしま)
泥大島(どろおおしま)
最も伝統的で代表的な大島紬です。奄美大島特有のテーチ木(車輪梅)の煮出し液で数十回染め重ね、さらに鉄分豊富な泥田で媒染(ばいせん)することで生まれる、深く艶やかな黒褐色が特徴です。
白大島(しろおおしま)
地糸(ベースとなる糸)を染めずに、絣模様の部分だけを染色して白地を活かした大島紬です。清潔感があり、明るく爽やかな印象を与えます。泥染めとは異なる染色技法が用いられます。
色大島(いろおおしま)
泥染めの黒でも白大島の白でもない、さまざまな色彩を基調とした大島紬です。赤・青・緑・紫など、色のバリエーションが豊富で、華やかなものからシックなものまで多様な表情を見せます。
藍大島(あいおおしま)
天然の藍を発酵させて作った染料液(藍液)で糸を染め上げ、織り上げた大島紬です。藍特有の深く冴えた青色が美しく人気があるものの、色移りの管理や染色の難しさから、現在では生産量が少なく希少性が高まっています。
「柄」の種類
大島紬に用いられる柄は、奄美の自然や文化を反映したものが多く、非常に緻密で芸術的です。
代表的な古典柄として、以下のものがあります。
・龍郷柄(たつごうがら)
・秋名バラ(あきなばら)
・西郷柄(さいごうがら)
龍郷柄(たつごうがら)
奄美大島に自生するソテツの葉や実、ハブの背模様などをモチーフに、幾何学的に図案化したものです。発祥地とされる龍郷町(旧龍郷村)の名が付けられています。
秋名バラ(あきなばら)
「バラ」とは、奄美の方言で竹製のザル(笊)のこと。このザルの格子模様をモチーフにした、幾何学模様の柄です。龍郷柄と並び、非常に人気の高い古典柄です。
西郷柄(さいごうがら)
主に男性用の大島紬に見られる柄で、細かい格子模様の中にさらに精緻な絣が織り込まれています。
明治維新の立役者である「西郷隆盛」が奄美大島に滞在した際に島民に親しまれたことから、その名を冠したと伝えられています。
上記の古典柄の他にも、草花や風景を描いた絵羽模様のもの。さらに、現代的なデザインのものも数多く作られています。
大島紬の価値の見分け方

ここからは、本物の大島紬であるかを見極め、さらにその価値の高さを判断するための重要な3つのチェックポイント、「生地」「マルキ」「証紙」について詳しく解説します。
これらの要素は、大島紬の買取価格にも大きく影響します。
ポイント1:生地の状態で価値を見極める
証紙がない場合でも、生地の見た目や触り心地は、本物であるかどうか。そして、状態の良い価値ある大島紬かどうかを判断する手がかりになります。
・生地が滑らかでツルツルとした手触り
上質な絹糸を高密度で織り込んでいるため、独特の滑らかさがあります。保存状態が良く、生地がしっかりしているものほど価値が高まります。
・衣擦れの音
着用して動いた際に、裾などが擦れ合うと「シャリシャリ」と独特の音がするといわれています。これは高密度な織りの証の1つです。
・糸の均一性と状態
精緻に作られたものは、糸の節(ネップ)や糸玉のようなものがほとんど見られません。シミや汚れ、虫食い、カビなどがない綺麗な状態であるほど、高い価値が期待できます。
ただし、中には上記のような見た目や触り心地を再現した偽物も存在するため、これらの特徴に当てはまるからといって、本物と断定はできません。
本物かどうかの最終判断は、生地以外の要素と合わせて行うことが重要です。
ポイント2:マルキ数で価値を判断する
大島紬の価値を大きく左右する、最も代表的な要素の1つが「マルキ」です。
マルキとは、経絣糸(たてかすりいと)の密度を表す単位のことで、この数字が大きいほど絣模様が細かく精巧になり、製織にも高度な技術が必要とされるため価値が高くなります。
マルキ数は、以下の計算式で求められます(小数点以下は切り捨て)。
【1反(約12m)あたりの経絣糸の総本数】÷ 80 =【Xマルキ】
つまり、「経絣糸80本で1マルキ」と数えられます。
経絣糸の本数が多くなるほどマルキ数が大きくなることも、この式からわかりますね。
市場に多く流通しているのは、「5マルキ」「7マルキ」「9マルキ」のものです。これらのマルキも十分に価値がありますが、12マルキや15マルキといったものは、絣合わせが非常に困難で製織に高度な熟練技術を要します。
生産数も極めて少ないため、「最高級品」として非常に高い価値が認められるのです。
マルキ数が高いほど、買取相場も上がる傾向にあります。
ポイント3:証紙で品質と価値を確認する
大島紬の「品質」「産地」「価値」を裏付ける、最も信頼できる証拠が【証紙】です。各産地の組合が実施する厳しい検査に合格した反物にのみ貼られます。
証紙には、大島紬の価値判断に不可欠な情報が記載されているため、一度確認してみましょう。
大島紬の証紙は1種類ではなく、以下のように主に2種類存在します。
・奄美大島産(本場奄美大島紬協同組合発行)
・鹿児島県産(主に鹿児島県本土で生産)
それぞれの違いについて、見ていきましょう。
「奄美大島産」の反物には、「地球印」が描かれた証紙が貼られているのが特徴です。
「鹿児島県産」の反物には、「日本国旗」が描かれた証紙が付いてきます。鹿児島県産の証紙のなかでも、証紙の色がブルーのものとオレンジのものに分かれます。
ブルーのものは、大島紬の特徴である絣糸を使って織られた反物に付けられる証紙です。この証紙にある伝統工芸品マークの下に「鹿児島県本場大島紬協同組合連合会」と書かれていれば手織り、「鹿児島県絹織物工業組合」と書かれている場合は機械織りであることを意味します。
オレンジのものは、大島紬と同じ色を使いながらも絣糸は使わない「縞大島」に付けられる証紙です。オレンジの証紙には伝統工芸品マークがついておらず、代わりに「鹿児島県絹織物工業組合」のシールが貼られています。なお、オレンジの証紙が貼られている反物のほとんどは、機械織りです。
「奄美大島産」と「鹿児島県産」のどちらの価値が高いかは、一概にいえません。
しかしながら、一般的に機械織りよりは、手織りの大島紬の方が高く評価されます。
証紙は、手織りか機械織りか。そして、本場大島紬としての基準を満たしているかなど、価値に直結する情報を提供してくれます。証紙の有無と内容は、価値を見極める上で必ず確認しましょう。
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大島紬とほかの着物との見分け方

大島紬の主な産地は、鹿児島県の奄美大島と鹿児島市の2か所です。しかし、それ以外の地域で作られているにも関わらず、「大島」という名前の付く織物が存在します。
そのほかに、大島紬と同じように「●●紬」という名前の織物も存在し、違いが正しく認識されていないこともあります。
ここでは、名前や見た目が似ている以下3つの着物について、見分け方を見ていきましょう。
・韓国大島
・村山大島紬
・結城紬
韓国大島との見分け方
大島紬が全盛期とされた1970年頃、「韓国大島」と呼ばれる織物が存在しました。
韓国大島は、その名前のとおり韓国製の大島紬のことです。人件費などのコストを削減するために生産され、国産の大島紬より低価格で販売されていました。一時は、国産のものと同じくらい流通していたとされています。
韓国大島は、国産の大島紬にとって脅威となりましたが、大島紬そのものの需要が落ち着くにつれて生産量も少なくなりました。現在では、中古市場で見かける程度です。
韓国大島の反物の織り口には、「韓国産」「MADE IN KOREA」などと記載されていることがあるため、見分ける際にはこの点を確認するとよいでしょう。
着物に仕立ててある韓国大島には、上記のような表示がないことが多いため、国産のものと見分けるのは簡単ではありません。
しかし、韓国大島は国産の大島紬に比べ、手触りがやや硬くゴワゴワしている、光沢が少ない傾向があるといわれています。
村山大島紬との見分け方
大島紬と名前が似ている織物として、「村山大島紬」が挙げられます。
村山大島紬は、東京都武蔵村山市で生産されている紬です。名前だけでなく風合いも大島紬と似ているため、一緒のものだと認識されてしまうこともありますが、実際は別物です。
村山大島紬では大島紬と同じ生糸を用いるものの、泥染めなどの染色技法は使わず、「板締め染色(いたじめせんしょく)」の技法を採用しています。板締め染色とは、図案をもとに文様を彫刻した板を使って色を染める染色技法です。
村山大島紬は、大島紬と似た風合いながらも比較的リーズナブルな価格で入手できます。
村山大島紬と大島紬は見た目が似ているため、最も確実な見分け方は「証紙の確認」です。
結城紬との見分け方
大島紬と同じように「●●紬」という名前の織物として、「結城紬」が挙げられます。
結城紬は茨城県結城市や栃木県小山市などを中心に生産されている紬で、大島紬と並ぶ日本三大紬の1つです。
大島紬と結城紬は、使用している糸や染色方法に違いがあります。
大島紬は生糸から作られ、主にテーチ木や泥で染めるのに対し、結城紬は手紡ぎ糸から作られ、主に藍や化学染料で染めます。
これら2つの紬は、生地の質感から見分けることが可能です。
大島紬はつるりとした感触で光沢がある一方、結城紬はザラザラとした手触りで温かみのある生地をしています。
まとめ

今回は、大島紬の見分け方について解説しました。
本物の大島紬であるかどうか、価値の高い大島紬であるかどうかは、「生地」「マルキ」「証紙」から見分けることが可能です。
本記事では、大島紬と名前や見た目が似ている「韓国大島」「村山大島紬」「結城紬」についてもご紹介しました。
これらの織物に関しても、生地の感触や証紙、光沢感などから見極められることがありますが、着物の専門家でない限り100%正確に見極めるのは困難です。
もしお持ちの着物の売却をお考えの方で、「これは本当に大島紬?」「自分の持っている大島紬は価値が高く評価される?」などとお悩みの方は、ぜひ福ちゃんにご相談ください。
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