- 骨董品
- 2025.09.22
有名な版画と種類を一挙紹介!国内外の代表作から価値の決まり方まで徹底解説

版画と聞いて、葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」やアンディ・ウォーホルのカラフルなマリリン・モンローを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
版画は古くから世界中の芸術家に愛され、木版画・銅版画・リトグラフ・シルクスクリーンなど多様な技法で魅力的な作品が生み出されてきました。
この記事では、国内外の有名な版画の種類や作家、代表作品、さらにはその価値がどのように決まるのかまで詳しく解説いたします。
版画とは?基本を解説(主な4つの種類と技法)

版画は、「版」と呼ばれる原版を用いて、紙や布などに摺(す)ることによって制作される絵画の1種です。
油彩画のような1点ものの絵画とは異なり、同じ版から複数の作品を制作できることが最大の特徴となっています。
しかし、1枚1枚が職人の手で摺られるため、インクののり方や圧力の加減によって微妙な違いが生まれ、それぞれに独特の味わいが宿ります。
この「複数芸術」としての特性こそが版画ならではの大きな魅力。まずは、代表的な版画の種類とその技法について詳しく見ていきましょう。
版画は制作技法によって大きく4つのカテゴリーに分類されます。
✔ 凸版画
✔ 凹版画
✔ 平版画
✔ 孔版画
凸版画
凸版画(木版画など)は、版の出っ張った部分にインクを付けて摺る技法で、彫り残した部分が線や面として表現されます。
力強い線と素朴な味わいが特徴で、日本の浮世絵はこの技法の代表例です。
凹版画
凹版画(銅版画など)は、金属板に溝を彫り、その溝にインクを詰めて摺る技法です。繊細でシャープな線描が可能で、レンブラントやデューラーといった巨匠たちも好んで用いました。
平版画
平版画(リトグラフなど)は、水と油の反発作用を利用する技法で、石版や金属板の上に描画したままのタッチをそのまま再現できるのが特徴です。
絵画的な表現に適しており、ロートレックやシャガールの作品で知られています。
孔版画
孔版画(シルクスクリーンなど)は、版に開けた穴からインクを押し出す技法で、鮮やかで均一な色彩表現が得意です。
アンディ・ウォーホルがこの技法を用いてポップアートの代表作を生み出しました。
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《日本編》世界に誇る有名な版画作家と作品群

日本の版画、とくに浮世絵は、19世紀後半にヨーロッパへ渡ると大きな衝撃を与え、印象派の画家たちに多大な影響を及ぼしました。
この「ジャポニスム」と呼ばれる現象は、西洋美術史に大きな転換点をもたらしたのです。
江戸時代に花開いた浮世絵から、近代の創作版画、そして現代アートまで、日本の版画は独自の進化を遂げます。
葛飾北斎・歌川広重・棟方志功といった巨匠たちの名前は、今や世界中で知られるほどに。
浮世絵は江戸時代(1603年-1867年)に、庶民の娯楽として発展した独特の木版画です。「浮世」とは現世を意味し、当時の風俗・美人・役者・風景などが生き生きと描かれました。
版元・絵師・彫師・摺師という分業体制により、高品質な作品が大量に生産され、一般庶民でも手に入る価格で販売されていたのです。
その後、浮世絵の伝統を受け継ぎながら、日本の版画は近代以降も独自の発展を遂げました。
そのような版画の有名作家や作品たちを見ていきましょう。
葛飾北斎
代表的な絵師として、まず葛飾北斎(1760年-1849年)が挙げられます。
彼の代表作『冨嶽三十六景』の中でも「神奈川沖浪裏」は、巨大な波と富士山を対比させた大胆な構図で世界的にも有名です。
波頭の表現は、まるで無数の手が船に襲いかかるようで、自然の脅威と美しさを表現。この作品は、ドビュッシーの交響詩「海」の楽譜表紙に使用されるなど、西洋文化にも大きな影響を与えました。
▼葛飾北斎の他代表作
✔ 凱風快晴(冨嶽三十六景)
✔ 山下白雨(冨嶽三十六景)
✔ 甲州三嶌越(冨嶽三十六景)
✔ 常州牛堀(諸国滝廻り)
✔ 諸国名橋奇覧
✔ 景勝雪月花
歌川広重
もうひとりの巨匠、歌川広重(1797年-1858年)は、叙情的な風景描写で知られています。
代表作『東海道五十三次』は、江戸から京都までの東海道の宿場町を描いた連作で、雨や雪、霧などの気象表現が見どころです。
とくに「庄野 白雨」では、激しい夕立に見舞われた旅人たちの姿が、斜めの線で表現された雨と共に臨場感豊かに描かれています。
▼歌川広重の他代表作
✔ 大はしあたけの夕立(名所江戸百景)
✔ 亀戸梅屋舗(名所江戸百景)
これらの浮世絵は、1860年代以降ヨーロッパに渡り、ゴッホ・モネ・ドガといった印象派の画家たちに衝撃を与えました。
平面的な構成、大胆な構図、鮮やかな色彩は、西洋絵画の伝統的な遠近法や陰影表現とはまったく異なるものでした。
この「ジャポニスム」と呼ばれる現象は、近代美術の発展に大きく貢献したのです。
棟方志功
日本人版画家としてとくに注目すべきは、「世界のムナカタ」と称された棟方志功(1903年-1975年)です。
棟方志功は自身の木版画を「板画」と呼び、仏教的な主題や日本の風土を力強い黒と白のコントラストで表現しました。
1956年のヴェネツィア・ビエンナーレで国際版画大賞を受賞し、日本人として初めて世界的な評価を得たことは、日本版画界にとって画期的な出来事だといえるでしょう。
代表作「二菩薩釈迦十大弟子」は、大胆にデフォルメされた人物像と、木の質感を活かした力強い彫りが特徴的です。
▼棟方志功の他代表作
✔ 勝鬘譜 善知鳥版画曼荼羅(しょうまんふうとうはんがまんだら)
✔ 大和し美し
✔ 女人観世音板画巻
長谷川潔
銅版画の分野では、長谷川潔(1891年-1980年)が国際的に高く評価されています。
パリで活動した彼は、メゾチント技法を極め、ビロードのような深い黒の表現が特徴的。静物画を得意とし、果物や貝殻などを神秘的な雰囲気で描き出しました。
▼長谷川潔の代表作
✔ ダンス
✔ 丘上の牛(大島)
✔ 金色に躍れる男
他有名作家たちの活躍も
現代においても、日本の版画は多様な展開を見せています。草間彌生の版画作品は、彼女の代名詞である水玉模様を用いながら、無限の増殖というコンセプトを表現。
奈良美智や村上隆といった現代美術家たちも版画制作を手がけ、日本のポップカルチャーと伝統的な版画技法を融合させた新しい表現を生み出しています。
《海外編》歴史を彩る有名な版画作家と作品群

ヨーロッパを中心とした西洋美術の巨匠たちは、油彩画だけでなく版画制作にも情熱を注いできました。
「レンブラント」「ゴヤ」「ピカソ」「シャガール」といった名だたる画家たちは、版画という媒体を通して新たな表現の可能性を追求し、数多くの傑作を残しています。
版画は彼らにとって、油彩画の複製手段としてだけではなく、独立した芸術表現として重要な位置を占めていました。
20世紀に入ると、アメリカでポップアートが誕生し、シルクスクリーンという技法が新たな芸術運動の中心となっていくのです。
時代を創った巨匠たちの版画からポップアートと現代版画まで、海外の有名な版画を見ていきましょう。
パブロ・ピカソ
パブロ・ピカソ(1881年-1973年)は、20世紀を代表する画家として知られていますが、版画家としても驚くべき才能を発揮しています。
生涯で2,000点以上の版画を制作し、エッチング・リトグラフ・リノカットなど、あらゆる技法を駆使して表現の可能性を追求しました。
とくに晩年の「347シリーズ」は、87歳の時にわずか7か月で347点のエッチングを制作したもので、老いてなお衰えることのない創作意欲を示しています。
闘牛や画家とモデル、神話的主題など、ピカソの関心事が自由奔放に表現されており、線の勢いと構成の大胆さはまさに圧巻です。
▼パブロ・ピカソの他代表作
✔ スイート・ヴォラール
✔ ミノタウロマキア
✔ フランコの夢と嘘
マルク・シャガール
マルク・シャガール(1887年-1985年)は、幻想的で詩的な作風で知られ、とくにリトグラフで素晴らしい作品を残しました。
代表作『ダフニスとクロエ』は、古代ギリシャの牧歌物語を題材にした42点の連作で、シャガール特有の浮遊感のある人物と、豊かな色彩が見事に調和しています。
青、赤、黄色といった原色を巧みに使い分け、恋人たちの喜びや自然の美しさを夢のような世界観で表現。
シャガールにとってリトグラフは、油彩画では表現しきれない透明感と軽やかさを実現する理想的な技法でした。
▼マルク・シャガールの他代表作
✔ サーカス
✔ 天使の湾
✔ 赤い太陽の恋人たち
アルフォンス・ミュシャ
アール・ヌーヴォーを代表する画家、アルフォンス・ミュシャ(1860年-1939年)は、石版画ポスターで一世を風靡しました。
女優サラ・ベルナールの舞台ポスター「ジスモンダ」(1894年)で一躍有名になり、その後も数多くの装飾的なポスターを制作しています。
流れるような曲線や植物モチーフ、美しい女性像を組み合わせたミュシャ様式は、当時のパリで大流行し、商業美術と芸術の境界を曖昧にしたと高く評価。
彼の作品は、版画が持つ複製性を活かして広く普及し、大衆文化に芸術性をもたらした先駆的な例といえるでしょう。
▼アルフォンス・ミュシャの他代表作
✔ 四季
✔ 黄道十二宮
✔ ル・パテル
アンディ・ウォーホル
1960年代のアメリカで誕生したポップアートは、大衆文化のイメージを芸術に取り入れ、シルクスクリーン技法がその中心的な役割を果たしました。
この運動の代表者であるアンディ・ウォーホル(1928年-1987年)は、マリリン・モンローの肖像やキャンベル・スープ缶といった日常的なイメージを、鮮やかな色彩で繰り返し表現。
ウォーホルの「マリリン・ディプティック」(1962年)は、女優の死後まもなく制作された作品で、同じ肖像写真を50回繰り返し配置しています。
左側はカラフルな色彩で、右側は白黒で表現され、スターの華やかさと死の虚無感を対比的に描写しています。
彼は版画の「複数生産できる」という特性を逆手に取り、大量生産・大量消費社会における個性の喪失や、有名人の商品化といったテーマを鋭く提示しました。
これは従来の「オリジナル」や「1点もの」を重視する芸術観に対する挑戦でもあったのです。
▼アンディ・ウォーホルの他代表作
✔ 毛沢東(Mao 96)
✔ 牛の壁紙
✔ Flowers(black and white)
キース・ヘリング
キース・ヘリング(1958年-1990年)は、地下鉄の広告板に描いたドローイングで有名になり、後にシルクスクリーンやリトグラフで多くの版画作品を制作。
太い黒い輪郭線で描かれた踊る人物や吠える犬などのシンプルなモチーフは、誰にでも理解できる普遍的なメッセージを持っています。
彼の版画は、アートを特権的な場所から解放し、より多くの人々に届けるという信念のもとに制作されました。
▼キース・ヘリングの代表作
✔ 光り輝く赤ちゃん(Radiant Baby)
✔ Pop Shop Series
✔ アンディマウス
現代版画で注目される人たち
現代においても、「デイヴィッド・ホックニー」「ゲルハルト・リヒター」「村上隆」「KAWS」など、多くのアーティストが版画制作を続けています。
デジタル技術の発展により、新しい表現の可能性も広がっており、版画は今もなお進化を続ける生きた芸術形式なのです。
その価値は?有名な版画の価値を決める3つの要素

「有名な版画は、なぜ高額で取引されるのでしょうか?」これは多くの方が抱く疑問のひとつです。
版画の価値は、作家が有名かどうかだけで決まるわけではなく、作家の評価・作品の希少性・保存状態など、複数の専門的な要素が複雑に絡み合って価値が形成されるのです。
これから解説する3つのポイントは、お手元にある版画の売却を検討される際にも役立つでしょう。
1)作家の知名度と人気
版画の価値を決める最も重要な要素は、やはり作家の知名度と美術史における評価です。
「ピカソ」「シャガール」「ウォーホル」「北斎」といった世界的に評価が確立されている作家の作品は、常に高い需要があるため、市場価値も必然的に高くなります。
これは美術品市場の基本的な原理で、需要と供給のバランスによって価格が形成されるためです。
また、同じ作家でも特定の時期の作品に人気が集中する傾向があります。
たとえば、ピカソの場合は「青の時代」や「バラ色の時代」の作品がとくに人気が高く、北斎では『冨嶽三十六景』制作期の作品が最も評価されています。
作家の全盛期や、代表的なスタイルが確立された時期の作品は、その作家の本質を最もよく表現しているとされ、コレクターからの需要も高くなるのです。
さらに、作家の生前に制作された作品と、没後に工房や財団が制作した作品では、価値に大きな差が生じることも覚えておくべきでしょう。
2)エディション(限定部数)とサインの有無
版画特有の価値基準として「エディション」があります。これは作品の限定制作部数を示すもので、通常は作品の余白に鉛筆で「35/100」のように記載されています。
この場合、分母の「100」が総制作枚数、分子の「35」がその中の35番目の作品であることを示しています。一般的に、総制作枚数が少ないほど希少価値が高まり、価格も上昇する傾向にあります。
たとえば、同じ作品でもエディション数が30部と300部では、前者の方が10倍の希少性があるため、価値も相応に高くなるのです。
さらに重要なのが、作家本人による直筆サインの有無です。
版画の場合、通常は鉛筆で作品の余白にサインが書かれます。このサインは、作家自身がその作品の仕上がりを確認し、認めた証となるため、作品の真正性を保証する重要な要素となります。
同じ版画でも、サイン入りとサインなしでは市場価値が2倍以上違うことも珍しくありません。
また、「A.P.(Artist’s Proof=作家保存版)」や「E.A.(Epreuve d’Artiste=同じく作家保存版のフランス語表記)」といった特別なエディションは、通常のナンバリングされた作品よりも希少性が高く、価値も上がる傾向にあります。
これらは本来、作家が手元に保管するために制作された特別な作品だからです。
3)作品の状態(コンディション)
美術品全般にいえることですが、作品の保存状態は査定額に直接的な影響を与えます。版画は紙を支持体とすることが多いため、適切に保管しないと劣化しやすいという特性があるのです。
具体的な劣化の例として、「シミ」は湿気による茶色い斑点で、一度発生すると除去が困難です。
「ヤケ(退色)」は光による色あせで、とくに直射日光は大敵です。「波うち」は湿度変化による紙の変形、「破れ」や「折れ」は物理的な損傷を指します。
これらの劣化は、作品の美的価値を損なうだけでなく、市場価値も大幅に下げてしまいます。
たとえば、同じ作品でも、完璧な状態のものと、シミやヤケがあるものでは、価格が半分以下になることも。そのため、購入時の状態を維持することは、価値を保つうえで極めて重要となるでしょう。
保管の際は、直射日光を避け、温度と湿度を一定に保つことが基本です。
額装されている場合は、紫外線カットのアクリルやガラスを使用し、マットには中性紙を用いることが推奨されます。
額縁自体の状態も査定に影響する場合があり、オリジナルの額縁や、作家が選んだ額縁であれば、それ自体が作品の一部として評価されることもあります。
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ご自宅に眠っている版画の中にも、予想以上の価値を持つ作品があるかもしれません。
版画の価値を正確に判断するには、作家の真贋や技法の特定、エディションの確認、保存状態の評価など高度な専門知識が必要です。
大切な版画を売却される際は、これらの要素を総合的に判断できる、信頼できる買取業者に依頼することが何よりも重要だといえるでしょう。
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まとめ
本記事では、日本の浮世絵から西洋の巨匠たちの作品まで、古今東西の有名な版画について詳しく解説してきました。
版画の基本的な4つの技法(凸版、凹版、平版、孔版)から始まり、北斎や広重といった浮世絵師、ピカソやシャガールなどの西洋の巨匠、そしてウォーホルに代表される現代のポップアートまで、版画芸術の豊かな世界をご紹介しました。
また、版画の価値を決める重要な要素として、作家の知名度、エディション番号とサインの有無、作品の保存状態という3つのポイントも解説。
版画1枚1枚には、作家の創造性と職人の技術、そして時代の空気が込められています。
複数制作できるという特性を持ちながら、それぞれが唯一無二の魅力を放つ版画は、美術品として特別な位置を占めているのです。
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