- 切手
- 2022.06.08
根強いファンを持つ「天皇陛下記念切手」とは?

切手には、販売される期間や枚数が限られているものも多くあります。なかでも「天皇陛下記念切手」は人気が高く、切手コレクターであれば多くの方が知る存在です。
しかし、一言で天皇陛下記念切手といっても、その価値は発行された時代や種類によって非常に大きな幅があるのです。
そこで今回は「天皇陛下記念切手」について、その歴史的背景から価値の高い希少な切手、そしてご自宅にもあるかもしれない近年の切手の価値まで、詳しく解説します。
天皇陛下記念切手とは?皇室の慶事と歴史

「天皇陛下記念切手」とは、日本の切手発行が始まった明治時代以降に発行された、天皇陛下に関連する切手の総称です。
皇室の「慶事」で発行される特別な切手
天皇陛下記念切手は、天皇陛下のご即位やご結婚、ご在位の節目など、国家的な「慶事」や皇室のお祝い事(慶事)を記念して発行されます。
たとえば、以下のようなタイミングが挙げられます。
✔ 天皇陛下の御即位
✔ 皇太子(東宮)の立太子礼
✔ 天皇・皇后両陛下のご成婚
✔ ご在位〇〇年記念
✔ 銀婚式などのご結婚記念
これらは皇室の慶事や関連行事を題材にした記念・特殊切手が中心で、発行趣旨は多様です。
明治から令和へ、主な天皇陛下記念切手の歴史
天皇陛下記念切手には長い歴史があり、その時代を映し出すコレクション品でもあります。
明治時代
1894年(明治27年)に、日本初の記念切手として「明治天皇銀婚記念」が発行されました。これが天皇陛下記念切手の始まりです。
大正時代
「大正大礼(即位の礼)記念切手」(1915年)や、「裕仁立太子記念切手」(1916年)、「皇太子御帰朝切手」(1921年)など、皇室の重要な行事が続き、多くの記念切手が発行されました。
この時代の切手は、発行枚数が比較的少なく、希少価値の高いものが多く存在します。
昭和時代
「昭和大礼(即位の礼)記念切手」(1928年)から始まり、戦後には「昭和天皇御在位五十年記念」(1976年)が発行。
そして大規模な切手ブームの中で発行された「昭和天皇御在位六十年記念」(1986年)などがあります。時代が下るにつれて発行枚数が飛躍的に増加しました。
平成・令和時代
「天皇陛下御即位記念(平成)」(1990年)、「皇太子殿下御成婚記念」(1993年)、そして記憶に新しい「天皇陛下御即位記念(令和)」(2019年)などがあります。
これらは数千万枚から億単位で発行されており、多くの方が記念に購入しました。
「記念切手」と「特殊切手」の違い
今回の記事では「記念切手」と紹介していますが、郵便局の分類上は「特殊切手」として扱われます。一般的に「記念切手」は、国家的な行事などを記念して発行されるものを指します。
一方で「特殊切手」は、特定のテーマ(アニメ、文化、自然など)に基づき、シリーズものやキャンペーンとして発行される切手を指すことがほとんどです。
天皇陛下記念切手は、慶事を記念する「記念切手」でありつつ、郵便局の分類上は「特殊切手」の枠組みで発行されています。
どちらも通常の切手とは異なり販売期間や枚数が限定されるため、コレクションの対象として高い人気を持つ限定切手です。
査定・出張費・手数料はすべて無料。
天皇陛下記念切手の価値はどう決まる?

天皇陛下記念切手といっても、その価値は発行された年代や種類によって大きく異なります。中古市場(切手買取)において、価値を判断する主な基準は「希少性」です。
具体的には、以下の3つのポイントで価値が決まります。
1. 発行年と発行枚数(希少性)
切手の価値における最も重要な要素は、現存する枚数の少なさです。発行年が古く、歴史的な価値がある切手ほど高額になる傾向があります。
また、発行年が古くなくても、何らかの理由で発行枚数自体が少ない切手も、価値は高くなるでしょう。
たとえば、大正時代の切手は発行枚数が数十万枚から数百万枚程度でしたが、昭和後期の記念切手は数千万枚単位で発行されています。この差が価値に直結します。
2. 切手の保存状態
切手は紙でできているため、保存状態が価値に大きく影響します。同じ切手でも、状態によって価値は数倍、ときには数十倍も変わります。
未使用シート(小型シート)
発行されたシート(複数の切手が連なった状態)のまま、シミ、黄ばみ、破れ、折れが一切ない「未使用美品」が最も価値が高くなります。
とくに「小型シート」と呼ばれる、切手と余白でデザインが構成されたものは、シート全体での価値が評価されます。
未使用バラ
シートから切り離された「バラ切手」の未使用美品です。シートよりは価値が下がりますが、希少な切手であれば高値が付きます。
ヒンジ跡の有無
かつて切手収集で使われた「ヒンジ(切手をアルバムに貼るための糊付きの薄紙)」の跡が裏面にあるものです。未使用であっても、ヒンジ跡がある場合は価値も下がります。
使用済み
一度郵便物に使用され、消印が押されたものです。一部の希少な切手や、歴史的価値のある消印(例:発行初日の消印)以外は、価値が大幅に下がることが一般的です。
3. エラー切手や特殊な消印の有無
極めてまれですが、印刷の過程で生じたミス(色のズレ、文字の欠け、印刷されていない部分があるなど)がある「エラー切手」は、その希少性から非常に高額で取引されます。
また、前述のとおり、使用済みの切手であっても、発行初日の消印(初日印)や、歴史的に意義のある日の消印が押されている場合、その消印自体に価値が認められ、高値がつくことも。
《高額》希少価値のある天皇陛下記念切手7選

コレクション目的で購入されることが多い天皇陛下記念切手ですが、発行枚数が少なく希少性の高いものは、とくに高額で取引されます。
ここからは、そんな天皇陛下記念切手のなかでも、とくに価値の高いものを7種類、紹介します。
明治天皇銀婚記念切手
1894年(明治27年)に発行された「明治天皇銀婚記念」は、明治天皇・皇后のご結婚25周年を記念し発行されました。
日本で最初の記念切手としても有名です。
日本で切手が登場したのは1871年(明治4年)ですが、その後20年以上、切手は「郵便物に貼る金券」としての役割しかありませんでした。
そこに、「慶事に記念切手を発行したらどうか」という案を出したのは、当時の日本に在留していた外国人だったとの説も。
この声をすくい上げたのは当時の郵便や交通を管轄していた逓信省の大臣、黒田清隆氏でした。この切手は式典に間に合わせるため、1ヶ月弱で図案起こしから印刷までされたと伝えられています。
明治天皇銀婚記念切手の額面は、2銭と5銭の2種類です。
発行数は「2銭」が1480万枚、「5銭」が100万枚となっており、同じ明治天皇銀婚記念切手であっても、発行数の少ない5銭のほうが価値は高くなります。
大正大礼記念切手
発行は1915年(大正4年)。大正天皇の即位の礼(大礼)を記念して発行されました。額面は1銭5厘、3銭、4銭、10銭の4種類があり、とくに10銭は高い価値があります。
| 切手額面 | 発行枚数 | 図案 |
|---|---|---|
| 1銭5厘 | 2,270万枚 | 式典のかんむり |
| 3銭 | 2,365万枚 | たかみくら |
| 4銭 | 217万枚 | 紫宸殿式場 |
| 10銭 | 223万枚 | 紫宸殿式場 |
裕仁親王立太子礼記念切手(昭和立太子札)
発行は1916年(大正5年)。昭和天皇として即位される裕仁様が「立太子の礼」を受けられた記念に発行された切手です。
額面は、1銭5厘・3銭・10銭の3種で、10銭は発行が86,000枚と極少です。
立太子の礼とは、皇位継承順位に基づいて皇太子となる皇子を、正式に皇太子として内外に宣明する儀式です。
近代以降は皇室典範に従って皇位継承順位が定められており、立太子の礼は主に儀礼的な意味合いを持つ行事とされています。
皇太子御帰朝切手
発行は1921年(大正10年)。のちに昭和天皇となる裕仁皇太子が、ヨーロッパからお戻りになることを記念して発行された切手です。
当時、皇族の方が長期間外国を訪問することは前例のない大きな出来事でした。
皇太子御帰朝切手は国内初のオフセット印刷で、1.5銭500万枚/3銭500万枚/4銭30万枚/10銭20万枚が発行されました。流通準備の都合で主要郵便局中心での販売となりました。
東宮御婚儀祝典記念切手
1923年に発行予定だった「東宮(昭和天皇)御婚儀祝典紀念切手」は関東大震災のため中止されました。
南洋諸島に発送済みだった分が返送され、翌年のご婚儀の際に皇室へ献上。現存は約1千組とされ、極めて希少です。
一部の関係者に贈呈されたものの、公式では不発行扱いとされ、幻の切手と呼ばれています。
大正天皇銀婚記念切手
この切手は1925年(大正14年)、大正天皇・皇后のご結婚25周年を記念して発行されました。
額面は1銭5厘、3銭、8銭、20銭の4種類。発行数は1銭5厘と3銭がそれぞれ500万枚、8銭は30万枚、20銭は20万枚となっています。
希少価値もこれに比例するため、発行枚数が少ない「20銭」は最も高い価値があるといえるでしょう。
バラでも価値の高い切手ですが、全4種類がそろった状態(完種)やシート状だと、さらに希少性も高まります。
昭和大礼記念切手
発行は1928年(昭和3年)。昭和天皇の即位の礼を記念して発行されました。額面は1銭5厘、3銭、6銭、10銭の4種類があります。
| 切手額面 | 発行枚数 | 図案 |
|---|---|---|
| 1銭5厘 | 2,548.5万枚 | ほうおう |
| 3銭 | 2,555万枚 | 大嘗宮 |
| 6銭 | 255.6万枚 | ほうおう |
| 10銭 | 258.9万枚 | 大嘗宮 |
《額面付近》近年の天皇陛下記念切手の価値と背景

「価値の高い切手」がある一方で、私たちが目にする機会の多い近年の記念切手は、異なる価値観で評価されます。
ご自宅にある切手がどの年代のものか、ぜひ照らし合わせてみてください。
昭和後期~平成・令和の記念切手
ご自宅の整理などで見つかる天皇陛下記念切手の多くは、昭和後期から平成、令和にかけて発行されたものでしょう。
具体的には、以下のような切手が挙げられます。
✔ 昭和天皇御在位六十年記念(1986年)
✔ 天皇陛下御即位記念(平成・1990年)
✔ 皇太子殿下御成婚記念(1993年)
✔ 天皇陛下御在位十年記念(1999年)
✔ 天皇陛下御即位記念(令和・2019年)
これらの記念切手は、発行当時に記念品として購入した方が多く、現在でも未使用のものが大量に市場に存在しています。
なぜ近年の記念切手は価値が上がりにくいのか
近年の記念切手の価値が上がりにくい理由は、主に2つあります。
1つ目の理由に、昭和の切手ブーム(1970年代)以降、記念切手の発行枚数が格段に増えたことが挙げられます。
明治・大正期に数十万枚だったものが、昭和後期には数千万枚から億単位で発行されるようになったのです。
2つ目の理由は、郵便需要そのものが低下し、切手が「使うため」ではなく「コレクションのため」に購入されることが多くなったからだと考えられています。
結果として、未使用の切手が大量に市場に残っており、希少性が高まりにくい状況にあります。
そのため、これら近年の記念切手は、切手買取市場においては「額面に近い価格」での取引となることが大半です。
天皇陛下記念切手の相場一覧表

代表的な天皇陛下記念切手の価値の傾向を一覧表にまとめます。
※これはあくまで一般的な傾向であり、実際の買取価格は保存状態によって大きく変動します。
| 切手名 | 発行年 | 相場価格帯(美品・未使用) |
|---|---|---|
| 【高額傾向】 | ||
| 明治天皇銀婚記念(5銭) | 1894年 | 数千円から2.5万円 |
| 大正大礼記念(10銭) | 1915年 | 5千円から2万円 |
| 裕仁親王立太子礼記念(10銭) | 1916年 | 数万円から25万円 |
| 皇太子御帰朝切手(10銭) | 1921年 | 数千円から1.5万円 |
| 大正天皇銀婚記念(20銭) | 1925年 | 数万円 |
| 昭和大礼記念(10銭) | 1928年 | 数百円から数千円 |
| 【額面に近い傾向】 | ||
| 昭和天皇御在位六十年記念 | 1986年 | 額面~やや上回る程度 |
| 天皇陛下御即位記念(平成) | 1990年 | 額面~やや上回る程度 |
| 皇太子殿下御成婚記念 | 1993年 | 額面~やや上回る程度 |
| 天皇陛下御即位記念(令和) | 2019年 | 額面~やや上回る程度 |
天皇陛下記念切手を「高く売る」ための3つのポイント

もしご自宅に天皇陛下記念切手があり、売却を検討される場合は、いくつかのポイントを押さえることが重要です。
ポイント1|切手の状態を悪化させない(正しい保管方法)
切手は非常にデリケートです。価値を下げないために、以下の点に注意してください。
アルバムから無理に剥がさない
古いアルバムに切手が貼り付いている場合、無理に剥がそうとすると破れたり、裏面が薄くなったり(薄紙)します。価値を大きく損ねるため、そのままの状態で査定に出しましょう。
湿気と直射日光を避ける
湿気はカビやシミ、黄ばみの原因となります。また、直射日光(紫外線)は色あせ(ヤケ)を引き起こします。風通しの良い、暗い場所で保管してください。
直接手で触らない
手の皮脂がシミの原因になることがあります。切手を扱う際は、ピンセット(切手専用のもの)を使用するのが理想です。
ポイント2|個人取引(フリマアプリなど)を避ける
最近はフリマアプリなどで切手を売買する方もいますが、希少な切手の場合はオススメできません。
適正価格が分かりにくい
切手の価値は専門知識がないと判断も難しく、希少な切手を額面近い価格で手放してしまう可能性があります。
状態説明のトラブル
「シミがある」「ヒンジ跡があった」など、購入者との間で状態認識のズレが起こりやすく、トラブルの原因となります。
偽物のリスク
ご自身が「本物」と思っていても、万が一偽物であった場合、知らずに「偽物を売る」ことになれば、大きな問題に発展しかねません。
ポイント3|切手専門の買取業者を選ぶ
切手の価値を適正に評価してもらうためには、専門の買取業者に依頼するのが最善の方法です。
業者を選ぶ際は、以下の点を確認しましょう。
✔ 切手に精通した査定士がいるか
✔ 最新の相場データを把握しているか
✔ 手数料は無料か
リスクや手間を避け、自身の身を守るためにも、売却の際は信用できる買取業者に依頼するようにしましょう。
まとめ

今回は天皇陛下記念切手について、その価値の決まり方や代表的な種類をまとめてみました。天皇陛下記念切手の価値は、発行年や種類によって大きく異なります。
明治・大正時代の発行枚数が少ない切手や、特定の小型シートは非常に高額になる一方、昭和後期から平成・令和にかけての切手は、流通量が多いために額面どおりの評価になるものが大半です。
ご自宅に眠っている切手が「もしかしたら希少なものかもしれない」と思われたら、ぜひ一度、専門家による査定を受けてみてはいかがでしょうか。
買取福ちゃんには、切手買取の経験豊富な査定士が在籍しております。
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天皇陛下記念切手に関するQ&A
天皇陛下記念切手の買取や売却に関して、お問合せの多い質問をまとめました。
Q1. 使用済みの切手や、アルバムに貼られた切手も価値がありますか?
A1. 多くの使用済み切手は、価値が大幅に下がります。しかし、本記事で紹介したような明治・大正時代の希少な切手の場合は、使用済みであっても価値が残ることもあります。
また、発行初日の消印など、消印自体に価値がつく場合もあるため、ご自身で判断せずにそのままの状態でお見せいただくことをオススメします。
Q2. 切手はシート(台紙)のままでないと売れませんか?
A2. シートから切り離された「バラ切手」でも買取は可能です。ただし、一般的に切手はシート(複数の切手が連なった状態)の方が、バラ切手よりも高く評価されます。
とくに、周囲の余白部分(耳紙)にもデザインが施されている「小型シート」は、バラしてしまうと価値が大きく下がるため、シートのままの状態が最も価値が高くなります。
Q3.「竜文切手」も天皇陛下の記念切手ですか?
A3.「竜文切手」(1871年発行)は、日本で最初に発行された切手であり、天皇陛下記念切手ではありません。
非常に歴史的価値が高く、現存数も極めて少ないため、保存状態によっては高額がつくこともある、日本で最も有名な高額切手のひとつです。
本記事で扱った「天皇陛下の慶事」を記念して発行された切手とは分類が異なります。

