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1837年、ティエリー・エルメスというひとりの馬具職人がフランスの首都パリに高級馬具工房を設立。当時の皇帝ナポレオン3世などを顧客として隆盛を誇り、1867年のパリ万博で銀賞を得るなどしてその名を高めました。ティエリーは万博で金賞をとることにこだわっていましたが、1878年のパリ万博を見ずして惜しくも死去。2代目のシャルル・エミール・エルメスによって、その年に金賞を獲得しています。

その後も馬具工房として発展したエルメスでしたが、1890年代に指揮を執っていた3代目のエミール=モーリス・エルメスは馬車の時代が終わりを告げつつあることを察知し、ブランドの方針を転換。馬具制作で培った皮革加工の技術を活かしたバッグを生み出したことを皮切りに、アクセサリーやファッション小物、さらに洋服まで幅広く手がけるファッションブランドとして生まれ変わりました。

ちなみに、エミール＝モーリス・エルメスの晩年は激動の第二次世界大戦の前後と重なりますが、この時期、エルメスの代名詞というべきオレンジのブランドカラーが生まれました。
当時はベージュがブランドカラーでしたが、長引く戦争によって物資不足となり、ベージュの包装紙などが極端な品薄になったため、苦肉の策として似た色合いのオレンジを使用したところ好評を得たため、以後、ブランドカラーは鮮やかなオレンジとなった……という逸話があります。

そんなエルメスの手がける洋服の特徴は、遊び心がありながらもシックで“オトナの着こなし”に適したデザインを基調としていることです。
ヴェロニク・ニシャニアン、マルタン・マルジェラ、ジャン＝ポール・ゴルチエといった優秀なデザイナーを迎えてプレタポルテ(高級既製服)の秀作を世に送り出しています。

特に、マルタン・マルジェラがレディースプレタポルテのデザイナーとして指揮を執っていた時期は「マルジェラ期」と呼ばれるエルメスの全盛期で、この時期の洋服は特に高い人気と価値を誇ります。
またゴルチエも、そのたぐいまれなセンスを活かしたデザインによって話題を呼んでいます。オレンジのブランドカラーを活かしたシャープなシルエットの洋服の数々もまた、世界中のファンに親しまれています。