甲冑(かっちゅう)とは、平安時代から江戸時代まで、武士が戦場で身につけていた防具の総称です。一般的には「鎧兜(よろいかぶと)」とも呼ばれ、鉄・革・漆・組紐など、当時の高度な技術が集められて作られていました。甲冑の目的は、矢や刀から身を守る実用性だけではありませんでした。戦場で自分の勇敢さや威厳を示す晴れ姿としても使われ、武士にとっては、美しさやこだわりが詰まった「身にまとう芸術品」としての側面も強く持っていたのです。
時代ごとに見てみると、平安時代や鎌倉時代のように騎馬戦が中心だった時代には「大鎧(おおよろい)」がよく使われていました。その後、南北朝時代や室町時代になると歩兵戦が増え、「胴丸(どうまる)」が主流となります。さらに、集団での戦いや鉄砲の登場によって、戦国時代以降は「当世具足(とうせいぐそく)」へと姿を変え、戦い方の変化に合わせて甲冑も進化していきました。
現在では、甲冑は単なる歴史的な資料にとどまりません。金工や漆工、染織といった日本の伝統工芸の技術が結集された美術品として、日本だけでなく海外でも高い評価を受けています。

